メインバンク制に頼ったら企業は潰される?
雨…というと銀行ではよく出てくる例えがありますよね。「晴れている時に傘を持ってきて、いざ雨が降ってきた時には…」という一文。銀行って何?という話題になると度々登場します。
企業側としては、普段懸命に付き合ってきた以上困っている時はメインバンクを中心に助けてほしい…と思いたくなるもの。
実のところ現状は、どうなっているでしょうか?
メインバンク制に頼ったら企業は潰される?
事業性評価やライフステージ、金融仲介機能のベンチマークといった新制度により、昨今銀行の対応に変化が起こりはじめたのは間違いありません。特に、金融仲介機能のベンチマークの中でも、全地域金融機関に求められる共通ベンチマークの中には、
金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
というものが一番目に記載されており、メイン取引を行っている中小企業に対しては、メインバンクとして積極的に支援取組みを行うことを求められています。売上や、利益率に関する銀行員からの質問は、増えているのではないでしょうか?
メインバンクの横暴が始まる?
メインバンクというのは、率直に言って銀行にとって「自分たちの言うことを聞かざるを得ない企業」でもあります。何しろ、メインバンクが蛇口を閉じてしまえば、企業がどうなるのかは明らかですから。
既に半分以上の地方銀行は、本業(貸付業務)では赤字化しているといわれる今日、「メインバンク」は企業に何をしているかというと…
以下、私(弊社)が実際に企業経営者から伺った内容です
- 融資実行後に保険の加入を半ば強制され、かつその保険に担保(質権)をつけられた
- リスケ中に不動産売却の話をもってきた。売却自体はOKだったが「他社との競合」を拒否、売却時に仲介手数料をその「メインバンク」に支払うことになった。他に、もっと高額での打診があったにも関わらず。
- 事業譲渡の話をもってきて、売れ、売れと言って聞かない。事業は既に黒字を回復しているのに。M&Aの仲介手数料が欲しいとしか思えない
メインバンクであることの支援が、銀行が手数料を受け取るためのサービスの押し売りになっているわけで。それも会社の存続については(経営者の望む方向で)考えているとは思えない方向に振れている事象が起こり始めました。
企業の自衛のため
むしろ、これまで以上に企業は自らを守るため、銀行(地域金融機関)に対して対応しなくてはなりません。
私としては、お手伝いさせていただいている全ての企業様に
- 一つの金融機関に融資シェア50%超には、絶対にしない
- メインバンクとの取引が切れてしまっても、資金繰りが可能である
ことを前提としています。頼らなくてはいけないというのは、過剰な要求を受けても
断れない、ということです。そんな状況に追い込まれてはいけませんし、なってしまっていたら一刻も早く、脱却するべきなのです。
執筆:今野洋之