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ローカルベンチマーク評価は本業の利益!?

今年3月4日、第4回「未来投資に向けた官民対話」において安倍総理は地域企業の経営診断の指標として「ローカルベンチマーク」を活用した制度設計を指示しました。

 

この目的は、

 

「地域の金融機関や支援機関が企業と対話を深め、担保や個人保証に頼らず、生産性向上に努める企業に対し、成長資金を供給するように促す」(安倍元総理発言抜粋)ことにあります。

 

また、企業経営者等と金融機関、支援機関の対話を深める入り口として使われることとされており、金融機関等が独自の視点でより深い対話・理解をすることを認めつつも、入り口=大前提としてローカルベンチマークが利用されることが明示されています。

 

この、ローカルベンチマークという新たな評価手法においてはこれまでの金融機関の中小企業評価とは異なる切り口での財務指標が採用されています。

キーワードは「稼ぐ力」「生産性」

既に公開されている資料を調査・確認する限り、提示されている財務指標は今のところ6つあります。

 

1.売上増加率 ((売上高/前年度売上高)-1)%

2.営業利益率 (営業利益/売上高)%

3.労働生産性 (営業利益/従業員数)%

4.EBITDA有利子負債倍率 ((借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費))年 

5.営業運転資本回転期間 ((売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商)月

6.自己資本比率(純資産/総資産)%

 

これら6つの指標を見て、どう思われますか?

 

「当期利益」が1箇所も使われていないですよね。会社が最終的に残す利益ではなく、本業で稼いだ利益に焦点が当たっています。

 

一過性の特別損益や、本業とは関係のない営業外損益の前、営業利益をもって評価することが、これまでと大きく異なる点の一つです。実務上では、最終的な当期利益は変わらないからといって特別損益を活用してこなかった中小企業は数多くありますがそればかりでは、今後はわざわざ過小評価されることになりかねないことにご注意下さい。

 

また、労働生産性については、一般的な財務分析においては元々重要指標でしたが、融資の可否判断においては殆ど採用されることがなかったものです。今回スポットライトがあたることになりますが、このポイントは、企業にとって最大の資産であり、コストでもある「ヒト」が、真に有効な資産として活用されているか、活用できている企業であるかどうかを問うものでしょう。

 

どの金融機関でも共通の融資の五原則というものがあり、安全性、収益性、流動性、公共性、成長性、の5つとされています。ローカルベンチマークの採用により、収益性については「本業の収益」という側面が強調され、また新たに「生産性」という6つ目の原則が追加される、そのような理解でよいでしょう。

この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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