M&Aの失敗要因はPMI(買収後の統合戦略)ではない
「M&Aの失敗要因はPMI(買収後の統合戦略)ではない。事前の準備(戦略)が重要です!」
というお話です。国内のM&Aが増加していくと同時に、PMIの重要性が説かれることが多くなっています。
しかし、実際には目的が曖昧なままでM&Aが実行されたためにシナジーが生まれないケースや、シナジーは創出されているものの買収価額が高額すぎてのれんの回収すらままならないケースなど、M&Aの事前の準備不足によって失敗となることが多々あります。
本稿では、M&Aの成功確立を高めるために必要な買い手側の事前準備をご紹介します。
①目的の明確化
M&Aは「時間をお金で買う」手法という説明を目にしますが、これだけではなぜM&Aを行うのかという目的が曖昧です。M&Aはあくまで複数ある経営手法(戦略)の1つの手段であって、目的ではありません。
自社にとってM&Aを行う意義はどこにあるのか、なぜその企業・事業の取得を検討しているのか、期待される効果は何なのか、どのようなビジョンを描くのか、M&Aの具体的な検討に入る前にまずは目的を明確にすることが重要です。
②事業計画の立案
M&Aの目的を明確にした後には、取得する事業・企業の取得後の事業計画を立案します。
事業によってばらつきはありますが、計画の作成期間は5年~10年程度、PLを中心に作成を行い、BS・CFまで作成を行うとより計画の精度が高まります。
③成功・失敗の基準決め
どれだけ精緻に目的・計画を固めても、M&A実行後には計画通りに事業遂行ができない場合も考えられます。実行後にきちんとM&Aの効果測定を行うことができるよう、成功・失敗の基準を明確にしておく必要があります。
事業によって事業価値を生み出す源泉は異なりますが、基準を定量化する上では、結果数値として営業利益・経常利益・フリーキャッシュフロー・ROE・ROIC等の計画値との差異、KPIとして案件の受注率、社員1人あたり営業利益、社員の離職率等を分解して制定することが効果的です。
④事業・企業の運営責任者の選定
M&A実行後には、シナジーをきちんと実現するために、またグループガバナンスを強化することを目的に、代表者や財務責任者などの重要なポストを占める役割を自社から派遣することが一般的です。
誰に事業・企業の運営を任せるのか、どのような報酬を与えるのかなど、具体的なイメージを持って案件を進めていくことが重要なポイントとなります。
運営責任者の選定は可能な限り早い段階で実施し、可能であれば上記の①~③のプロセスに当事者として参加することが最良です。