一気に100%ではなく一部を売却する 或いは段階的に売却する方法もある
中企業のM&Aで、一気に100%ではなく、一部を売却する、或いは段階的に売却する方法もあるというお話をいたします。
株式の譲渡は、原則として金額・時期・割合などの条件について、契約を行う当事者で自由に決めることができます。
非上場株式のM&Aというと一度に100%の株式を譲渡する方法が連想されがちですが、既述のように株式の譲渡は自由な取引が原則ですので、事業を引き継ぎながら一部の株式を段階的に譲渡していくことも可能です。
例えば、株式を譲渡する大まかな時期と、譲渡する際の1株あたりの価額(もしくは価額を決める計算方法)を決めた上で、自身も社長や役員として在任しながら株式の買い手と一緒に経営を行い、会社の引継ぎを行いながら段階的に株式を売却する方法を採ることができます。
また、在任期間中の役員報酬を業績連動型にし、株式譲渡対価の一部を報酬に当てるなどの手法を採ることで、M&Aの成功を自身の収入につなげていくことも可能です。
株式譲渡を段階的に行うメリットとして、自身の会社経営に対する関与の度合いをコントロールしながらM&Aを実行できる点、また、先々の業績の向上が見込まれる場合には、1株あたりの価額の計算方法に直近の営業利益増加割合等を反映させることで、譲渡価額を大きくすることができる点が挙げられます。
株式の買い手からしても、オーナーが一部の株式を所有していることで、会社経営に対する責任感を持たせる効果を期待するかもしれません。
弊社でご支援した具体的な事例ですが、
- まず1回目の取引で、株式の51%を買い手に譲渡する。(この時点で経営権は買い手が取得)
- 旧100%オーナー(売り主)は代表取締役としてそのまま継続勤務(ただし、連帯保証はこの時点で解除)
- 残りの株式(49%)を1年後29%譲渡、2年後10%、3年後最後の10%を譲渡する。
その時、株式譲渡価格を業績に連動させておく設計にいたしました。
こうした段階的な譲渡を行う場合には、買い手様との交渉が必要となりますが、相互にメリットがあり、Win_Winになるようであれば、とても使い勝手の良い手法になります。
弊社では、このような段階的なM&Aをいくつもご支援しております。大事なことは、段階を追って、M&Aが100%完了するまでのルールを事前に、且つ最初のM&Aの時に契約書に明文化しておくことです!