簡単にM&A売却作業に着手はできない。
最近、立て続けに、M&Aで同じようなこと(資料の提出が全然なされないということ)が起こりましたので、再度、お伝えしたいと思います。M&A事業/企業を売却する決断は、本当に大きな尊敬すべき決断です。しかし、その大きな決断をしただけでは、売却活動の開始はできません。
売り手社長:「会社を売却したいです。これが決算書です。」
M&Aアドバイザー:「はい。これで売却活動をすぐ行います!」
という訳にはいかないのです。売却対象事業/企業を詳に伝える書類を買い手向けに作成する必要があります。その書類を作成するのは我々M&Aアドバイザーの業務ですが、売り手様には、その書類を作成するための資料を頂かないとなりません。決算書だけでできるものではなりません。
例えば、
- 定款
- 履歴事項全部証明書
- 株主名簿(誰が何株もっているか、各株主との関係が分かればOKです。)
- 決算書まるごと一式 3期~5期分
- 直近月までの月次残高試算表
- 借入・未払い(支払期限が過ぎている未払いがあれば)残高一覧
- リース支払い予支定表
- 規定集(就業、給与・報酬、賞与、退職金など)
- 賃貸借契約書
- 重要な取引先との契約書
- 会社案内、パンフレット、会社各所写真
- 給与台帳或いは給与明細(半年間分~1年間分)
- 可能であば商流が分かる図(簡単で結構です)
- 組織図(キーパーソン)・従業員名簿(性別・資格・役割・年齢・入社歴・社保有無など)
- 代表者略歴(箇条書き程度で十分)・会社の歴史(沿革)
- 不動産あれば、不動産評価証明(或いは固定資産税納付書)
- 不動産あれば、不動産登記簿謄本
- 御社の強み、特徴、弱み・要改善点のペーパー(書式自由)
- その他、同業者などに分かる機器設備一覧と写真などの一覧
- 直近期上位売上5社(社名、品目、額) 同期 仕入れ上位5社(社名、品目、額)
のような書類を用意してもらわないといけません。※無いものは無いでOK。これらの資料を要約して、M&Aアドバイザーが売却用の書類としてまとめます(これをインフォメーションパッケージとかインフォメーションメモランダムといいます)。書類を作成する以外に、これらの資料を揃えることが何故重要かというと、
スムーズなデュー・ディリジェンス(買収監査)の実施
買い手は、企業の健康状態やリスク、機会を正確に理解するためにデュー・ディリジェンスを行います。多くかつ正確な資料が用意されていれば、買収監査は迅速に進み、スムーズに取引が進行します。
信頼性と透明性の向上
買い手に対して十分な情報を提供することで、売り手は信頼性を高め、透明性を確保することができます。これにより、買い手は取引に対する不確実性を減少させ、信頼感を持って交渉できます。
交渉力の向上
売り手が包括的な情報を提供することで、価値やリスクに関する交渉が効果的に進む可能性が高まります。資料が揃っていることで、買い手は正確な評価を行いやすくなり、適正な価格や条件で合意が形成がなされます。
法的なコンプライアンス確保
M&Aプロセスでは法的なコンプライアンスが不可欠です。売り手が必要な法的文書や契約書を迅速に整理し、提供することで、合法的な問題や障害を事前に解決しやすくなります。
スピーディな取引クロージング
資料が整備されていれば、取引のクロージング(完了)までの時間が短縮されます。スピーディなクロージングは、市場の変動や取引の流れを考慮する上で非常に重要です。
信用獲得とプロフェッショナリズムの向上
資料の迅速な提供は、売り手がプロフェッショナル(しっかりしている会社)で信頼性のある取引相手であることを示す重要な手段です。買い手は信頼できるパートナーとの取引を好む傾向があります。
M&Aの成功は、信頼性のある詳細な情報提供と迅速な対応が不可欠なのです。
また、私は、これが一番重要だと思っていますが、これらの資料は経営管理の側面からも重要です。殆どが経営管理上、当たり前に具備されている或いは具備できるものです。日常の経営(管理)にも資するものですので、是非、普段からこれらの資料の具備を意識しましょう!