事業性評価における「成長性」は既存の財務評価と相反している
今後の企業評価において新たな軸となる事業性評価ですが、事業性評価を語るにあたっては「(事業の)成長性」に着目すること、とされています。
事業の成長性が、どのように財務諸表に反映されるかと言うと、まずは営業利益です。本業における事業収益がどれほどのものであるかは本業ではない収益・費用や、会計上のみの数値である引当の繰入等、他一過性の損失等を控除した営業利益こそが企業のもつ事業の本来の力として判断される、ということには異論はそうないのではないでしょうか。
この点では、事業性評価と既存の財務評価どちらにおいても矛盾はありません。問題は、この状態で事業が成長する=売上が拡大する、ことを想定した場合。特段の取引条件の変動が内限り、売上が拡大すると、売掛債権・棚卸資産は増加します。買掛債務も増加しますが、総じて正常運転資金は増加します。
このことが、事業性評価においては正常運転資金が増加する→融資を行うことで事業の拡大を支援する→事業の成長が実現するということで、正に融資をする理由となるのですが、既存の財務評価においては、正常運転資金が増加する→キャッシュフローが悪化する→企業評価が悪化する→融資を謝絶する原因になると、真逆の結論となってしまうのです。
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企業側も対話を続けながらの対応が続く
事業性評価の導入が進んでいくとはいえ、既存の財務評価手法がなくなるわけではありません。双方並行して企業を評価していくことになりますが2つの相反する見方を、どちらもクリアしようとするならば
・売上が増加することで正常運転資金もまた正常に増えていくことを十分に信じられる状況をつくる
具体的には、棚卸資産の計上を決算時のみにせず毎月末に行う、売上回収、仕入支払条件を明らかにしてそれぞれの回転期間を明確にし、売上の変動に伴う正常運転資金の上下動を正しく可視化できるようにする、等
・売上増加によるキャッシュフローの悪化を、その後の収益により一定期間で回収できるだけの利益率を確保していくそれだけの十分な粗利率、適切な設備投資や初期費用を検討していく
この二点は、どうしても必要です。そうなると、やはり適切な会計処理や、将来像の可視化は必須となります。また、
・上記二点を継続的に対話していくことで実現性が高いこと、「事前に書面で宣言していた内容が、ある程度実現できる」ことを証明していくこと
が何より必要であり、先の二点もこのための前振りといってよいでしょう。これからの中小企業には、複雑なものではないにせよ事業上の戦略を立て、実現したことを銀行と共有し、評価されることで財務上の戦略もクリアしていくことが必要になります。
コンサルタントも、単に過去の財務指標をいじるのではなく事業の本来の実力について、どのように信頼を得ていくのかがお手伝いするためのポイントとなりそうです。
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