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事業性融資は2026年末に法制度としてスタート

6月7日の参議院本会議において、「事業性融資の推進等に関する法律案」が可決、概ね2026年中の施行が確定しました。

 

  • 企業価値担保権の新設により、既存の担保対象資産のみならず棚卸資産その他の流動資産や設備等の固定資産や、のれんその他の無形資産も担保として活用できる
  • この担保権を貸し手の保全として、経営者保証を原則とらないとするとともに事業の実態や将来性に着目した融資を可能にする

 

ことを狙いとしており、ようやく前世紀末から蔓延っていた金融検査マニュアルに過剰依存する決算書評価でほぼ決まってしまう企業評価からの真の脱却が図られることになります。これにより、中小企業向けの金融制度の改革はいよいよ現実的なものとして捉えることができることになりました。

不可逆的な変化になると言える「法制度化」

私の周辺でも「内容は理解できるが、こんな大きな変化は本当にできるのか?」「実際は看板倒れになるのでは?」というご意見はよく伺います。

 

非常に大きな変化ですから、本当にできるのかな?という考えになるのは当然のことですが、私としては今回については変わっていくものだと確信しています。

 

理由は主に2つ。一つ目は、「法制度によるもの」だから、です。1998年の金融検査マニュアルに伴う貸し渋りの発生は、いいことではありませんでしたが、金融監督庁の設立によって実施されましたし、リーマンショック以降一般化したリスケジュールは2009年に成立した金融円滑化法によって、必要に応じた実施が定められたものでした。

 

一方、有名無実化されていると言われがちな制度はどうでしょうか?その全ては「ガイドライン」とか「指導」とか「方針」等というもので法制度のような国家としての強制力を持たせたものとは意味あいがあまりにも違うのです。

 

二つ目は、「今のままでは貸し手も借り手も倒れるだけ」という現実。金融検査マニュアルの延長線上の考え方では、これ以上新たな融資を行うことは困難です。コロナ禍から再び立ち上がろうとする企業や新たな生活様式に適応して伸びようとする企業に対して支援できるような制度ではありません。

 

これでは借り手=企業は間接金融を得て事業を再生・拡大することなどできはしませんし、貸し手は融資先を失って存在理由を失います。従って、この法による金融改革は、銀行(特に地域金融機関)自らの将来のためにも(もちろん中小企業のためにも)、避けて通ることはできないのです。

2年半という施行までの期間が重要

施行までは2年半という時間が設けられているため、今のところのタイムスケジュールでは2026年末の施行が予定されます。この間に、「事業性評価を適用されるためには」「企業価値担保権を導入するのか」等、各銀行も、企業側も、判断して将来像を考えていく必要があります。

 

銀行ごとに個性がでるでしょうし、また既存の方法論がなくなるわけでもないため(事業性融資が生まれても、既存の融資手法も併存します)、どの銀行との取引を強めるのか、既存/新たな手法での将来の調達を図るのか、選択肢が大きく広がっていきます。

 

ここ20年以上の「金融取引に選択肢がない」ことからすると大きな進歩ですが、選択次第では大きな不利となってしまうこともあるでしょう、財務上の将来の調達計画というものが、これまでよりも問われるようになるわけです、「銀行とのつきあい方」も、新たな姿にならなくてはなりません。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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