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ホールディングス化と銀行取引について

昨今、弊社へのご相談に「現在の会社をホールディングス化することを検討中ですが、、、」という内容のものが急増しています。改めてインターネットを開けば、特に税理士法人のホームページ等でホールディングス化を解説・勧めるような記事を多く見かけます。

 

実際、税理士先生等がよく企業経営者様に提案されているようで、分かりやすいメリットとして

 

  • 特に事業承継時の節税対策になる
  • 株式を集約化しやすい
  • 企業経営上のリスク分散

 

一方のデメリットとしては

 

  • 運営コスト(特に管理部門の人件費等)の増加

 

が挙げられます。

 

既に上手くいった例、失敗した例それぞれ出てきており、私としては「必要性の高い企業さんは取り組むべき」という、何とも当たり前な見地でいるのですが、ここでは表面上あまり言われない、でも裏側では問題になりがちな銀行取引上のポイントに触れたいと思います。

ホールディングス化は連帯保証が解除になるのか?

Web上の記事ではあまり多くは触れられていないとはいえホールディングス化に興味をもったり、進めたりする企業経営者様は「ホールディングス化すれば、経営者保証を外すことができる」ことを、提案者よりプレゼン・説明を受けていることが大半で経営者保証解除が重大な目的となっていることが少なくありません。

 

そして、実際には外れないことで弊社にご相談にいらっしゃる方が既に複数発生していらっしゃいます。

 

さて、どういうことでしょうか?

保証解除を主目的にするのは非推奨

中堅企業以上の場合、確かにホールディングス化した際に、ホールディング内の各事業会社の代表取締役が経営者保証を差入しない、ということは、確かに一般的です。

 

では中小企業の場合は?、率直に申し上げれば、ホールディングス全体の評価として一定以上であれば、持株会社及び各事業会社の経営者保証は必要ないでしょう。多少評価が悪い場合は、一部(特に持株会社)の経営者に保証を求められることがあるかもしれません。何らかの問題を銀行が認識していれば、ホールディングス化していない時と同様の対応となるのではないでしょうか。

 

理由は簡単で、「ホールディングス化=経営者保証を外す、という決まりはどこにもないから」です。

 

ホールディングス化する会社というのは、特に最近までは株式評価額が高い(企業価値が高い)中堅以上の企業が経営資源の最適化や節税を目的として行ってきたものでそのような会社であれば銀行からみてもホールディング内の子会社である事業会社からは保証を不要にするのは無理のないことでした(なにしろ、企業価値が高いのですから純資産がかなりある=自己資本比率が高いのです)。

 

あくまで、ホールディングス化=保証解除、ではなくホールディングス化するレベルの評価がある会社=保証解除、だったのです。保証解除の是非は、まずは財務評価を得ることですからここは履き違えてはなりません。

 

それを、どうも一部の専門家がホールディングス化すれば、経営者保証も外せますよ、とちょっと危なっかしい営業文句に変換してしまっているようです。

 

また、年商数億円以下の規模になると、節税効果があっても会社の運営コストの増加を吸収できるかは微妙なことも多いので

 

  • 少なくとも保証解除を主目的にしないこと(順当な経営を続けていれば、ホールディングス化しなくとも今日経営者保証は外せる方向にある)
  • 節税も超長期的な主目的にはしないこと(管理コスト増との比較をするべき、また将来的にはホールディング会社への課税も強化されることがほぼ確定的であるため、いつまでも有利とはいえない)

 

ことをお勧めしています。ホールディングス化は、メリットも相応にありますが無条件でやれば得というものでもないとご理解いただければ幸いです。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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