一度破産をした場合、どれだけ待てば再度借りられる?
私がこの会社で(前身を含めて)無料相談をやらさせていただくようになってから、もう15年以上が経過しました。リーマンショックの頃から、その時その時の時勢によった様々なご相談をいただいてきましたが、昔からある程度の頻度で発生する、私も身に詰まされるものは「かつて破産歴がある方からの資金調達のご相談」です。
法制度上では借りられるはずであっても、信用情報、いわゆるブラックリストに乗ったままの場合や既に信用情報はきれいになっていても金融機関内部には破産歴が半永久的に残ることで、融資の申し込みをしても審査にすらならない場合等、正直なところ、現在の制度では「銀行からの」融資という意味では困難な状況が多くかなり長い時間をかけて条件をクリアしていくか、ノンバンクを含めた資金調達を検討するかか、どちらかを考えていかざるを得ないのが実情です。
銀行側の都合
信用情報がクリアになっても、かつての破産時に貸倒を計上した銀行(ここでは金融機関全般に保証協会も)はその事実が半永久的に保存されることで原則融資は謝絶します。
法制度上貸してはいけない、という決まりはありませんが貸さなくてはいけないわけでもないため、以前貸倒をさせられた、という認識は重い十字架になります。ほとぼりが冷めれば、、、というものではないのです。貸倒をした銀行からすれば、基本は二度と貸さない、であることがスタートラインです。
この意味では、破産時にこの点の説明をよく(正しく)受けていらっしゃらなかった方が多く、再度事業を始めてから実態を知った、という何ともやりきれないコメントを何度うかがってきたことか。
現実的な対応としては、新たな銀行とプロパー融資を受けるだけの関係性を構築しなくてはなりません、それまでは銀行からの融資を受けなくてもできるような事業運営が求められるのです。
求償権放棄が活発になることで、新たな道が生まれるか
求償権とは、簡単に表現すれば「保証人等が、元々の債務者の代わりに債務を返済した場合に、その保証人等が元々の債務者に対して支払った金額を返還することを請求する権利」です。
中小企業向け融資においては、マル保融資において債務者企業が返済不能になった場合、銀行は保証協会に対して代位弁済をすることで回収しますが、保証協会は代位弁済時に支払った金額を債務者企業に対して請求することになる(会計としては、代位弁済によって借入先が銀行から保証協会になる)ことから、主に保証協会が代位弁済された企業に対してもっている権利です。
保証協会はこの求償権を持ち続けることから、破産をした(代位弁済の末に)相手に対しては銀行同様に新規融資の検討がほぼ出来ませんでした。
一方求償権を放棄、消滅させることで新たな融資をする制度はあるにはありましたが、ずいぶんハードルが高く、また予算自体も小さいことで、なかなか手の届くものではなかったのです。
が、2024年3月、金融庁は都道府県等に対して求償権放棄を円滑にするため、再チャレンジを含む条例制定をすることを要請しました。
求償権の放棄を制度化することで、この基準を満たすことができれば、破産歴・事故歴のある方でも保証協会の再利用の道が生まれる、これを再チャレンジのスタートにすることができるというわけですね。
また、都道府県によっては、求償権消滅を積極的に行うようになったところもあり、以前よりは少しずつではありますが幅が広がってきたように感じます。事業や経営者の再生が、破産前に限定されるのは厳しすぎないかと感じます。破産歴のある方でも、経験を活かした再チャレンジの可能性が広がることを願っています。