廃業支援は銀行にメリットが少な過ぎる
2023年11月27日、金融庁は来春にも監督指針を改正するとして、改正案を公表しました。中小・地域金融機関向けの監督指針においてはコロナ禍における資金繰り支援から脱し、経営改善・事業再生が重視されるとされ、
- 金融機関に対して、事業者の資金繰りに悪化が生じる予兆について継続管理を求める
- 信用保証付き融資が多い事業者については、信用保証協会との早めの連携を促す
- 事業者のライフステージに応じて提案する支援策を拡充経営改善が見込まれる事業者に対しては、よろず支援拠点や中小企業活性化協議会の助言利用を勧める
といった内容になっています。細かい内容は割愛しますが、以前よりもさらに「ライフステージに応じて」という文言に衰退期の企業へは廃業を勧めよう、という意思が感じられます。
「廃業支援」という直接的な表現も目立つようになって限りある国のリソースは、苦しい企業の維持よりも新たな取組みに分配したい、ということなのでしょう。
銀行の廃業支援はそもそも無理がないか?
しかし、仮に企業の新陳代謝のために企業の倒産が避けられないとしても、それを銀行主導で行うことは可能なのでしょうか。
変な話なのですが、廃業支援を銀行支援で行うことは非常に限られた範囲でしか無理なように思われます。別の表現をすれば、「倒産回避・処理」であれば銀行取組みは期待できても「廃業支援」は銀行にメリットが少な過ぎるのです。
というのも、倒産寸前の企業に対しては、銀行は「貸倒れ処理できるか」「M&Aによって多少でも融資の回収ができないか」等の、会計上の損失を抑える・利益を出すための方法を使うことができますが、廃業(債権者に害がない事業停止)支援となると
- 存続していれば銀行は金利や手数料をもらえるためわざわざ急いで状況を変える必要がない
- 無理に何かを変革し、代表者が変わっても新たな代表者と関係性が築けるか分からない
ため、積極的に取り扱うメリットがないのです。典型的な先送り、というわけです。
金融庁の指導は届くだろうか
11月22日には「廃業時における経営者保証に関するガイドラインの基本的考え方」を改訂、早期に廃業手続きを行えば、保証人の残存資産が増える可能性を明確化しました。
保証人、つまりは企業経営者にとっては、早期に廃業することのメリットが生まれつつあります。
廃業を検討しなくてはならない企業経営者が無為に廃業を先送りした結果、廃業ではなく倒産となってしまうことへの防止策といえ、先の監督指針の改訂も「廃業の先送りで倒産になることを防止したい」わけですが、企業経営者にはメリットがあっても銀行にメリットがなければ、取扱いは難しいでしょう。
本質的には、廃業できる内に廃業していただいた方が将来の貸倒れを減らす、という意味があるはずですが銀行(金融機関)は長期的な見地でも経営が行われていないのが現状であり、足元の収益ばかりを見ています。
色々な金融政策が動き出そうとしていますが、ボトルネックは一つ一つの政策の細かい是非よりも銀行の将来的・長期的なビジネスモデル設計の不在・不足にあることは、認識しておくべきでしょう。
どうあれ、継続するにせよ、倒産・廃業にせよ、最終的には経営者のご決断と責任によって定まるものです。
残念ながら、廃業・倒産は増えていく状況にはありますが将来に何を遺していくのか、が最も重要であり、関係者の将来の幸福度を最大にするためにしていくべきであることは、いうまでもありません。
エクステンドでは、経営者様からの無料相談を受け付けています。廃業を検討している、新たな資金調達を得たいや返済が厳しい、資金繰りが苦しいなどのお悩みでしたらお気軽にご相談ください。まずは下記バナーより「無料相談」をご利用ください。