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業種別支援の着眼点は自社の理解に役立つ!

中小企業を評価するにあたっては、業種毎の特色に配慮することが当然ではあるのですが、今日実務上では随分とこの概念が薄れてしまっていると言わざるを得ません。主な要因は、やはり「自動的な数的評価に依存しすぎている」という銀行側の状況にあります。

 

企業の決算書を銀行のシステムに入力した結果が格付け等の評価の基盤になることは広く知られていますが、多くの銀行で業種別の特徴を捉えて、反映させているとは言えずまた、人の判断で数的評価を覆すためのハードルはとても高いことから業種別の特徴を反映させることが困難でした。

 

さらに、この状況が20年以上と長く続いたことで、銀行現場では

 

業種の特徴は企業評価に影響を与えない

業種の特徴は重要ではない

業種の特徴を知る必要がない

 

となって、いつしか業種別対応をする意識自体が希薄となり、ノウハウも失われています。

 

しかし、本来の金融行政に立ち戻ろうとしている今日、改めて単コロを基盤とした融資の形になろうとすれば適切な事業・運転資金・設備資金のバランスを理解して融資支援を行うことが求められる以上、業種別の特徴を踏まえなければ、正しく企業を評価することはできません。

 

分かりやすい例を挙げるとするなら、、、宝飾店は一般に在庫の回転が遅いため、棚卸資産は月商の3ヶ月〜6ヶ月分あっても必ずしも過大とは言えません。しかし、現行では銀行からは「在庫が多すぎる」ことを理由として(マル保はともかく)融資がでにくいものでした。

 

確かに、在庫が多すぎるのは事業や経営としてよろしくないものですが、この業種に関して言うと

 

  • 店舗等での展示用在庫が少ないと、見栄えとして大問題
  • 入荷待ちをしなくてはならなくなった場合の機会損失は痛い

 

ため、他業種よりも在庫が必要になることは避けられません。

 

だからこそ、企業側では在庫帳を毎月とりまとめ提出して銀行は在庫総額が大きくとも死蔵在庫が許容範囲内であることを確認するなどすれば、単純に否定することもないのです。

「業種別支援の着眼点」は公開されている

この状況からの脱却を目指し、金融庁の委託を受けた公益財団法人日本生産性本部が作成した「業種別支援の着眼点」が、2023年3月に公表されています。

 

資料としては銀行が企業を評価する、という立場からの内容ですが企業経営として原理原則に基づいた内容であり、経営者にとっても銀行の立場や視点を理解するのみならず経営としての自社の理解に役立つものとなっています。

 

業種別の特徴を反映させることができるようになれば企業への金融支援を個別に、より適切に行うことが期待できるため再評価されることは間違いありません。

 

業種別支援の着眼点はこちら

https://www.fsa.go.jp/policy/chuukai/0330gyosyubetu_00.pdf

 

「業種別支援の着眼点」でインターネット検索をすれば金融庁チャンネルの動画もヒットしますので、是非一度ご確認いただければ幸いです。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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