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毎月の返済がない短期継続融資

短期継続融資を阻む壁は借り手側にもある

事業性評価に基づく今後の融資のあり方は、

 

受取手形+売掛金+棚卸資産−支払手形−買掛金

 

で算出される、正常運転資金相当額を短期継続資金として期日一括返済型での融資を行うことで「経常的な運転資金は元本の返済を不要とし、毎月の返済金額を軽減する」こととしています。

 

正常運転資金の算出項目は、平均的な事業が続いていく限り、毎月出入りがありつつも一定の金額は発生し続け、売掛や棚卸が回収される迄の間は資金負担になることは明白ですから、元本の返済が不要であるのは合理的なものです。

 

ここ20年以上、この当たり前ができなくなっていたことは金融検査マニュアルの弊害であり、短期継続融資の活用は、本来的には「復活」が正しくある意味金融検査マニュアル時代以前への回帰です。

 

戻る、わけですから単純に考えるとできて当然ですが、20年以上離れていたものを戻す、というのは相応にストレスのかかることであり、貸し手である銀行には改めて積極的な対応をお願いしていくことになりますが、短期継続融資の導入に対しては、借り手側企業にとっても抵抗感が残っていることは事実です。

一括返済が及ぼす恐怖感

短期継続融資に毎月の約定返済がないことは魅力的です。現状で全ての借入が長期になっている企業は多いですが、債務償還年数(キャッシュフロー/借入)が15年以内で済む企業は非常に少なく、実際に返済可能な金額は限定的です。合理的に返済金額を削減できる、というのは企業にとっても有り難いことではあります。

 

しかし、、、経営者様に伺う限り当然のように歓迎、とまではいっていないのが実情です。というのも、「期日一括返済、というのが気になる。期日になった際に継続してくれる、という確証はないのではないか?」とのコメントが大半の経営者様より寄せられるのです。

 

背景としては、1998年前後に発生したいわゆる「貸し渋り」の多くが、期日一括返済の延長を銀行が拒否したことによって発生していることも挙げられます。またそれをされてしまってはたまらない、というのが企業側の考えであり、20数年を経た今も根強く残っているのです。

 

本来、短期継続融資はそうそう一括返済を求める・求められるものではありません。正常運転資金の減少により減額、ということはあっても、いきなり一括返済というのは禁じ手だったはずなのです。

 

それを破ってしまったのが金融検査マニュアルの罪深いところです。そして、金融検査マニュアルをつくった張本人(当時は金融監督庁=今の金融庁)が、今度は短期継続融資を復活させようとしている、というわけです。

今一度、企業と銀行の対話の重要性を問い直そう

表立ってはいませんが、金融庁は金融検査マニュアルによる短期継続融資の否定が誤りであったことを認識した上で改めて短期継続融資の活用を打ち出ししています。

 

銀行にとっては、短期継続融資は根本的に合理的なものですから「金融庁がOKならやれる」ものです。ただ、どうしても一度根付いてしまった風習を打破するのに時間がかかっているに過ぎません。

 

企業側の恐怖心がもっともなものです。しかし、合理的な借入形態にもっていくことは、コロナ禍によって借入が増えた企業にとってとても大事なことです。

 

どんな借入形態であるべきか、企業と銀行がともに納得してより安全に事業に取り組めるのか、その追求として改めて、企業と銀行の対話が求められます。

 

私自身は、短期継続融資については積極導入をお勧めしています。万一、期日継続ができなかった場合は、、、その場合でも対処法はありますから

 

本来的に、毎月の返済によって現預金が減少していく、という状況は止めておくべきでしょう。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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