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商工中金の民営化で資金調達の選択肢は増えるのか

商工中金の民営化が今年に入って、商工中金の民営化議論がようやく進みました。元々は2015年までに政府保有株を処分することで民営化、となる予定だったのですが、リーマンショック、大震災に加え2016年に発覚した不正融資事件への対応によって先送りが続いていました。

 

政府系金融機関としての商工中金は、中小企業向け融資を本業とする一方で「メインバンクにはなれない」という縛りがあるため積極的な対応ができない側面ももっていました。民営化により「普通の銀行」になることができれば統廃合でメインバンクの選択肢が小さくなる一方の中小企業にとってもう一つの選択肢ができる、という点で歓迎してよいように思われます。

 

 

政府系金融としての役割は公庫と信用保証協会で対応していくことになります。

 

この点については、それぞれの役割を公庫は資本制ローン等の「通常融資以上の対応」、保証協会は「前向きな融資」、と定めて商工中金の穴を埋めていくことになりますが(今後別の機会に解説します)、確かに理にかなった取組みである一方で課題も残っています。

 

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期待は大きいだけに乗り越えないといけない壁

政府保有株は売却されるとはいえ特別準備金や危機対応準備金といった政府資金は当面処理されない方向であり、また根拠法は「商工中金法」のままで上場もされない、とされています。

 

民間銀行同様に「銀行法」を根拠法として上場される、となると民業圧迫になるのでは、との懸念があるようです。どうしても、完全な民営化には障害がまだ残っており未だ時間を要するのかもしれません。

中小企業にとっては必要

 

個人的には、民業圧迫とはいっても統廃合が進む今日の日本の金融機関においては企業側の選択肢が過剰に狭まるのは危険ですからある程度以上の規模と融資能力をもつ商工中金が中小企業のメインバンクになれる、ということは必要なことと考えます。

 

中小企業側の対応としてはどうでしょうか。特に、既に商工中金と融資取引のある企業については将来のメインバンク候補の一つとして捉えていいでしょう。

 

現在融資取引のない企業についても統廃合による融資取引銀行の減少への対応として考慮していく価値はあります。ただし、商工中金は元来財務分析をしっかり行う傾向が強く、財務情報をしっかり開示できる企業の方が高い評価を得られやすい特徴があります

 

日本政策金融公庫(国民)や、信用保証協会保証付き融資のような簡易的な審査で済むことは、あまり考えられませんので企業側の準備も相応に求められることは念頭においていただければと思います。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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