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事業成長担保権は信託制度として

今後の中小企業向け金融政策の肝となる事業成長担保権について度々触れてきました。ここ数ヶ月でニュースになることも増えてきましたが、23年度中の国会への法案提出を目指した検討が進んでいます。その中で、いくつか新たな情報が入ってきました。

 

【youtube】「事業成長担保が信託方式になればどのような影響があるのでしょうか?」もあわせてご確認ください。

 

事業成長担保権は信託制度として

個人事業主は除外

会社(事業)の総財産を包括的に担保化するもののため、事業の財産と生活の財産との区分が困難な個人事業主は本制度の対象外となります。

信託制度によって取扱が行われ、登記される

担保権者は新設される専用の免許を取得した信託会社となり、債権者である銀行(金融機関)と分離されます。これは債権者と担保権者が同一となった場合の権利の濫用を防ぐための判断と思われます。

 

担保権設定に際しては、会社と担保権者となる信託会社が信託契約を結んだ上で、登記簿への登記がなされることになります。

労働債権は事業成長担保権に優先される

未払給与・賞与や退職金等の労働債権については本担保権よりも優先されること

信託制度になると中小企業では使えない?

事業成長担保権の場合、全ての資産と将来のCF(入金)が担保になるため、債権者である銀行が担保権者でもあった場合に一方的に担保権を行使されかねないという懸念に対して信託制度を導入して債権者と担保権者を分離、また担保権の実行に際しては裁判所への申立てにより、選任された管財人が処分権を持つことで対応する、というのは合理的です。

 

しかし、、、信託制度ともなれば信託会社への手数料がかなり多額になることが予想される(当初費用に加えて、ランニングコストも)ため中小企業、それも年商で言えば10億円以下の規模になってくるとなかなか使いにくいのでは、と感じます。

 

中小企業に対しての金融制度がコスト高、というのはあまりにも無理があります。

さらに別の選択肢「経営者株式担保」

そこで、中小企業向け、という意味では経営者株式担保がフォーカスされます。

 

こちらはその名の通り、経営者が持つ株式を担保にする、というもので、法律上では現状でも設定可能です。

 

担保権が実行された場合、企業は資産処分や事業の大きな変更に担保権者=銀行の承認が必要になるため、実効力としては事業成長担保権にかなり近いものになります。

 

経営者株式担保については来週以降また触れたいと思いますが事業成長担保にせよ、経営者株式担保にせよ、目的は企業の将来の成長性に着目した金融支援を行うことであり、企業側にとって選択肢が増える(事業成長担保か、経営者株式担保か、既存手法による担保か、それとも無担保でのみ調達を考えるか)という点で悪いことではないと考えます。

 

それぞれの内容やリスクを理解した上で、ということはもちろん当然のことではありますが、今後とも新たな制度が多くの中小企業にとってこれからの世の中を生き抜くための方法となりますようにまずは内容をいち早くお伝えしてまいります。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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