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決算書に財務上の改善行動が反映されるのは、翌年〜翌々年になる

財務上の対策には時間がかかる

コロナ禍を超えた先にある世界経済の中で、日本の中小企業がどのようにして生き残っていくのか、金融庁が検討している新たな施策と対応をお伝えしておりますが、全体像としての導入には数年間を要するものと推測されます。

 

一方、移行措置としては順を追って進んでいるものも表面化してきており(例えば、事業成長担保権の検討や経営者保証の緩和)、遠い将来に全てが変わる、というよりは少しずつ変化が起こっていくことになるのでしょう。

 

とはいえ、財務上の措置というのは変化に適応しようとしても、それを正式に表現できるのは決算後、さらに考えれば、適応措置を実施した期は適応期間が発生することから、適応措置12ヶ月分の効果が表現できるのは翌期決算申告後、と考えると、「財務上の改善行動が反映されるのは、翌年〜翌々年になる」のです。

 

ある意味、お金に困ってから融資を受けようとしても困難であることと同義で、必要に迫られる前にやれることはやっておくことが肝要です。

今から始められる対応

そこで、改めて新制度の実施を待たずとも、中小企業にとって新制度の活用に役立つためやっておくべきことから検討されるのがよいのでしょう。今回は大原則として2点挙げていこうと思います。

営業利益への着目

売上原価、販売管理に計上されるコストの内、営業外費用、特別損失での計上が可能なものはそちらに計上することで、例え税引前利益としては同額であっても営業利益を大きくすることはできます。

棚卸資産の月次更新

事業性評価を中心とした新たな企業評価手法をベースとした融資判断において、

 

受取債権+棚卸資産−支払債務

 

で算出される正常運転資金を、元本の返済が原則不要である短期継続融資で行うことは基本形となりますが、そのためには融資先企業の正常運転資金が決算時のみならず季節要因や相場その他の変動要因でどのように変動するのか理解できないと、信用して融資を行うことは難しいのです。

 

従って、試算表を月次作成することに加えて棚卸資産を都度更新することは(実地棚卸はともかく、せめて帳簿棚卸だけでも)これからは非常に重要になります。

税理士先生には、企業側から依頼するべき

このポイントの実施には、税理士先生のご協力が必要ですが原則企業側から依頼するべきです。なぜなら、この2点は税理士先生にとっては「納付する税金の金額としてはあまり変わらない」が、税理士先生の手間にはなり得るからで、税金対策ではなく財務対策であることを予め共有しないと意図が伝わらず、協力を得られない怖れがあるためです。

 

コンサルとしても機能している税理士先生ならば、概ねご協力は得られることでしょう。

 

コンサル現場においても、苦しい中でも支援を得られる企業にはこの2点を満たしていることが多いです、まだの企業様には是非、ご検討いただければ幸いです。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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