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新たな担保制度「事業成長担保権」による融資の促進は可能か?

融資の限界

本メルマガ8月19日号にて、メインバンク制の再構築に伴う中小企業側の備えについて触れました。

 

Part1から4迄、概ね「本当に頑張っている企業と銀行には希望を持ちやすい」制度と評価できるのですが、いくら銀行にもっと企業を見て融資をしてくれ、といっても限界があります。

 

根本的に融資は投資と異なり、ローリスク・ローリターン商品であって、取引期間の長さによって収益を出していく構造です。単にもっとリスクととれ、というのならば金利の大幅引き上げ無しにはビジネスモデルとして無理、という結論にしかなりません。

 

それが難しい、となれば次善の策として担保等の融資債権の保全を銀行が得ることである程度銀行も安心して融資できる環境を用意するべきなのですが、、、

新たな担保制度による融資の促進は可能か?

中小企業には担保として提供できるような資産がそうそう無いことは、皆様ご存知ではないでしょうか。

 

元々担保として捉えられていた資産をまとめてみれば

 

・預金

預金担保でお金を借りるくらいなら、その預金で支払えば借入する必要ないのでは?

 

・不動産

含み益と担保余力を持つ不動産を持つ中小企業はあまり多くない

 

・有価証券等

担保としての取扱は不可能ではないが、本業にとって「どうしても必要」でない限りは担保にするくらいなら売却して現金化した方がよいと考えられがち

 

といったところですし上記以外の資産でいうと売掛金や棚卸資産の担保は一部取扱があるものの、まだまだ発展途上ですし、管理が大変なため、金利等の条件は悪いです。

 

機械設備等の固定資産も担保としての取扱は不可能ではありませんが、銀行側が担保価値を定めづらいため、現実には困難と、なかなか難しいのが実情です。そこで、新たな担保制度の導入が検討されているのですが、それは、「事業成長担保権」というものです。

事業成長担保権とは

端的に申し上げれば、事業成長担保というのは「会社の持つ全ての資産と、将来のキャッシュフローの全て」を包括で担保にする、というもので今日現在の日本では存在しないものの、アメリカ他では以前より存在しているものです。

 

この制度の検討は2021年4月より既に法務省が議論をはじめており(金融庁も幹事として参加)、銀行でも三井住友銀行等が既に新担保制度への期待を表明する等、将来的な導入を目指しています。

 

この概念ならば、いままで以上の保全を銀行も得られ、融資もしやすくなることが期待できますが、、、全ての資産とキャッシュフローを担保に出す、というのは株式を担保に出すのと同様、いやそれ以上に経営権を差し出すようなもの。

 

経営者にも大きな覚悟を要求することになりますがそれでもどうして、この事業成長担保権が検討に値するものなのか、中小企業側の対応はどうするべきなのかについては来週の金曜日に触れていきたいと思います。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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