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これからの融資取引はメインバンクに集中する

新たなメインバンク制

メルマガ2022年7月29日号にて、これからの融資取引はメインバンクに集中すること、中小企業にとって融資取引銀行は、民間銀行については極端に言えば一つで十分、という形を目指すことに触れました。

 

企業側からみれば、メインバンクの対応が渋いことから借入額を確保するために取引銀行を増やす傾向にあったのが、ここ20年以上の常識だったわけですが、大きく覆していくことになります。

 

現状から大きく変わる概念ですから、当然大きな反発も予想されます。

 

しかし、考えてみれば、この新たなメインバンク制は企業にとっても、銀行にとっても合理的であり価値のある企業・経営者を救済し、発展していただくいためには現状のままより余程良いもの、としか思われません。

 

紆余曲折はあるでしょうが、最終的には変革の方向に向かうものと考えます。その背景を、今回は銀行員の立場で考えてみます。

銀行員の「本当の」働き方改革が始まる

メインバンク制に回帰し、取り組んでいく場合、銀行員の働き方は大きく変貌します。以下に項目を列挙します。

担当先が少なくなるが、その分密度を濃くできる

例えば、平均的な企業の融資取引金融機関が4あって、メインバンクとなっている可能性はそれぞれ均等だとすれば、一つのメインバンクが全ての融資を引き受ける形に移行すれば担当先は四分の一になります。よって、融資担当者が一つの会社に掛けられる手間や時間は単純に4倍になり、「もっと企業を見ろ、と言われても時間などない」という銀行現場の問題が大きく緩和されます。

結果として、ノルマへの対応が減る

上記に関連しますが、銀行員はここ20年以上「融資ノルマ達成のため、少しずつの金額でも多くの企業に貸さざるを得ない」

 

「メインバンクとしては責任をとりたくないが、ほどほどにリスクのない融資をしたい」という仕事の仕方をしてきました。かつての私もです。今振り返ると、このために費やす手間・時間は膨大で、半分以上は「どうしたらこの企業さんに、メインバンクを押しのけてある程度の融資ができるか、でもメインバンクにはならない範囲で」(元々メインの場合は「これ以上無担保を増やさず融資ができるか」この意識でいました。

 

メインバンク制への回帰は、このような金融調整・銀行のシェア争いやメインバンクの押し付け合いにかけてきた手間を抑え、無駄なノルマ対応をなくすことで、銀行員にとって真にメイン先と向き合うことを目指すものです。

メインであることから逃げる銀行は、必然的に淘汰される

一方で、もし「メインバンクとしての責任はとりたくない」と考える銀行があれば、どうなるでしょう?

 

メインでなければ融資ができない、となれば必然的に融資先がなくなることになります。元々民間金融機関の補完的役割をもっている政府系金融機関は別ですが、金魚のフンのような存在は要らなくなる、というわけですね。

 

以上のように、新たなメインバンク制は銀行員にとって大きな変革を生みます。

 

しかし、ポイントはそれだけではありません。企業側にとっては、どんな変化があるでしょうか?次回メルマガには、この点に着目してお伝えしたいと思います。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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