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社長は、財務を理解するべきだろうか

財務とはなんだったか

これからは社長も財務を理解するべき、と言われて久しいです。少なくとも、私が社会人になった頃(1998年)にはよく先輩からも、取引先の社長からも言われていました。

 

売上だけ見ていても利益は出ないし、売上自体が思うように出ないし損益とは無関係に資金繰りが悪くなったりもする中で会社の資金繰りを安定的に確保するために、、、という意味合いが強かったように思います。

 

一言で財務、と言っても意味や定義はそれぞれですが、この場合は概ね「銀行から融資を得ることで資金繰りを安定させる分析、活動」を指していました。

 

本来の財務の定義とは少し意味合いが異なりますが、今も財務=資金、と考える方は相応に多く、別に間違いではありません。が、今回の主題ではないので、この点については割愛します。

銀行は今、何を社長から聞きたいのか

今回肝心なのは、「銀行融資を得るため」としての財務活動はその重要性を著しく失っている、ということです。

 

自己資本比率、債務償還年数等といった財務指標はこれからも使われるのですが、ここ2年以上コロナ禍で売上も利益も正常ではなかったことで本来の事業活動による財務指標評価が不可能になっていること、重要なことは「これから」どれだけの収益を出せるのかということに帰着したこと、ビフォーコロナとアフターコロナでは、企業が同じ売上・利益を出せるわけではないため(これまでのメルマガで触れてきた通り、コロナが明けてもそのまま売上は回復しない企業が大半で、かつ原価は上がっている)連続性がないことから単に過去の分析を行っても意味がない、と銀行側もよく分かっているのです。

 

大事なことは

 

  • 今後の事業のあり方を定義する
  • 過去データは参考にしつつ、現在の原価やコスト状況を踏まえた今後の収益目標をつくる
  • そのためのアクションを定め、実施する
  • 進捗を確認し、再検討する

 

ことの繰り返しであって、これらは過去の決算書や試算表の見せ方を考えることとは異なり、誰もが知っている社長業と同列のことに過ぎません。

 

過去実績の分析から、現状を把握することは必要ですが、そこから適正な負債(借入)はどれほどなのか、どうすれば、新規借入・返済によって、適正な負債と適正な現預金の両立ができるのかの将来像を銀行は知りたいのです。

 

この意味で言うなら、銀行の知りたいこと、というのは過去分析はこれから必要な利益水準を知るための物差しであって、肝心なことはこれからの会社のあり方そのもの、というわけです。

銀行の融資を得るため、という財務は別に知識は要らない

かつては「金融検査マニュアル」や、格付けの仕組みを理解したい、と考える社長様もいらっしゃいましたが、私としましては上記のように考えれば、過剰に学んでいただかなくても、と考えています。

 

私がお手伝いしている企業様でも、経営者の方には「事業での取り組みや方針の説明」で8割以上は手間を割いていただいておりますし、それで困ってもいません。

 

これからは、事業が評価されれば、自然に銀行からの評価は上がっていくのです。

 

財務指標上の必要事項は、必要なら銀行の方から教えてもらうこともできますし、こんなことに手間をかけるくらいなら、お近くの専門家を使っていただくのもよいでしょう。社長業は社長にしかできませんが、財務対応は最終的に数字で表現され、成果確認ができる以上誰かに委託することもできるのですから。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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