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メインバンクは惰性で決めてはいけない

メインバンク制の復活

2008年、リーマンショックの際に「メインバンクが助けてくれない」という相談を何百件も受けました。確かにこの頃、リスクを恐れる銀行はメインバンクなんだから何とかして欲しい、と言われることを嫌がっていたことを覚えています。

 

一方、ここ数年ではメインバンクとして積極的に舵取りを行う、そんな取り組みが、また見られるようになりました。

 

金融庁がそのように指導していることももちろんですが、10数年も前のリーマンショック以来、苦境の中でも努力を続けてきた企業に対しては前向きな支援をしないと、最早融資する先がなくなってしまうという危機感の表れ、といってよいのでしょう。

 

現在政府や金融庁が検討中の中小企業金融政策においても、メインバンクに主導権をもたせるものが多くありこれまでなら全ての融資取引銀行の合意が必要だった支援もメインバンクが音頭をとることで可能、となればよりスピーディに、より深い金融支援が実行される余地が大きくなることでしょう。この辺りの具体的なところは、来月くらいにはお伝えできるのではないかと思われます。

 

メインバンク=融資残高が一番多い、だけれども

さて、問題なのはどの銀行がメインバンクなのか、ということです。

 

一般的にメインバンクと言えば融資残高が一番多い銀行、ということになりますが、「信用(プロパー・無担保融資)残高が一番多い銀行」も同じでしょうか?

 

同じであればさしあたっては問題ないのですが、そうでない場合は万全とは言えません。

 

企業が創業して発展していく経緯で、

 

  1. 最初はマル保で、ある程度大きくなると無担保も混じる
  2. 設備投資等の大きな資金需要が入って有担保も加わる、マル保は使い切る
  3. 後から参入してきた銀行は、マル保が既にできなくなっており営業の観点からもプロパー無担保で頑張って融資する

 

といった具合で銀行取引を拡大してきた企業の場合、気がつけば借入金額も融資取引銀行数も増えている割に残高上のメインバンクはマル保・有担保ばかりで実はリスクをとっていない、ということが結構発生します。

 

この落とし穴にはまってしまった企業が、リーマンショック等の際に「メインバンク」から支援を受け辛くなっていたのです。なにしろ、貸し倒れても大した損失がでないのですから、本気で支援をしようとはしない訳です。

だが、銀行のせいにはできない

しかし、そのような状況にしてしまったのは経営者自身です。銀行取引は、都合のいい時はどうとでもできますが、そんな時に正しいバランスをつくらなくてはならないのです。

 

困ってからではできない、それが融資なのですから。

 

普段から、どこででもできるはずの融資も疑うべきです。言われたからやる、ではダメなんです。メインバンクは、信用残高も最も多くなければなりません。時には、マル保をメインバンク以外に振り向けることも必要です。

 

さて、他メインバンクの選定や対応については、来週もう一度触れたいと思います。正しいメインバンクから、より深い支援を得られますように!

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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