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新たな中小企業の財務方針

これまで通りでは、もう無理

中小企業の財務方針とは、思い切りシンプルにしてしまえば「将来の事業方針に伴って必要な資金を確保する」ことが大きな目的の一つであり、そのために多くの企業が銀行融資が得られるようにする、という手法をとることになります。

 

これ自体は当然のことですが、具体的な考え方としては

 

  • 現預金は最低月商1ヶ月分から3ヶ月くらいは確保し、足りなくなりそうなら融資を得て確保する
  • 利益が出た場合、節税も兼ねて利益を将来に繰延する

 

といった辺りが一般的なところではないでしょうか。しかし、この考え方はもう止めるべき、と考えます。

「想定外」を想定する

2022年1月現在、オミクロン株の世界的蔓延によって再び経済活動が抑止されています。コロナ禍というものは、本当に想定することが困難で国をあげて支援する、というのも当たり前。

 

しかし、2008年のリーマンショック以降、東日本大震災、ここ数年の台風などの天候災害、主に中国の政策変更や動静による価格や需要の変動、そして、今回のコロナ禍等、一つひとつは全くもって想定外なことが数年に一度は起こってしまっているのが現実です。

 

もはや「数年に一度は、自身ではコントロールできない要因で数カ月間売上(利益)が激減する」

 

形で、想定外のことが起こることを織り込んで安全性を確保しないと、もう危機には耐えられなくなってしまうでしょう。

 

そうなると、企業が手許にもっておくべき現預金というのは月商1ヶ月分ではあまりにも心許ないものででは2ヶ月分なのか、3ヶ月分なのかというよりも「持てるだけ持っておく」という思想であるべきです。

 

つまり、融資については「借りられるだけ借りておいて、現預金を厚くする」ことが何より会社の守りとなります。

節税は融資を遠のかせる

となれば、決算においては利益をそのまま計上する方が融資を得ることに繋がるのですが、どうしても利益が出てしまうと、節税を考えてしまう経営者様が多いのです。節税によって、納付する税金を減らす、というのは直接的に会社の経営に寄与するように感じられるものですが、実際のところ

 

  • 節税は何らかの金融商品を購入することによって行われることが大半で、結果として現預金は減少する
  • 融資に伴う企業評価は利益額にある程度連動するため利益の抑制は融資の謝絶・実行額減に繋がる

 

ために、将来の危機対応として現預金を確保することと節税とは、反対の動きになるのです。

 

節税を全て否定するわけでもないですが、現預金の備えも不十分な状態で行ってもリスクを抱えるだけということです。

 

今はコロナ対策融資によって一時的に現預金が確保できている企業も多いことでしょう、しかし、その後の返済も踏まえ、保証協会に依存しないプロパー融資をいかにして引き出すかが今後の中小企業の財務戦略のポイントとなるでしょう。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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