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新たな地域金融機関への資本規制は融資の増加を生む?

金融庁は、2024年3月末より、地方銀行や信用金庫に新たな資本規制を導入することを発表しました。地方銀行や信用金庫が資産として持つ株式の評価を厳しくする一方で、中堅・中小企業向け融資については貸倒れリスクを小さく評価する、というものです。

 

金融庁の狙いは、地域金融機関により積極的な融資をさせて企業の資金繰りや地域経済の支援を促進する、ということですが実際の効力はあるでしょうか?

銀行が縛られている自己資本比率規制

今回の金融庁の発表は、いわばバーゼル規制(BIS規制、国際的に活動する銀行の自己資本比率を規制するもの)の国内版といってもいいようなものです。

 

地域金融機関(概ね地方銀行・信金・信組)も財務の健全性を保つため、一定の自己資本比率を維持することが求められますが上記金融庁発表でいうところの「株式」や「融資」は、地域金融機関自身にとって「資産」であり、これらの評価が大きい・小さいで資産や純資産の評価が変わる=自己資本比率が変わります。自己資本比率が下がりすぎると、最悪業務の停止まであり得るので金融機関としてはとても大事な問題です。

 

これからは、地方銀行や信金がもつ株式についてその株価が変動、特に下落した場合によりリアルタイムに評価することになる、つまり株式を保有することが大きなリスクになる一方で、貸出金=融資については、これまでより貸倒れリスクを小さく評価できるために、資産としての評価額を維持しやすい→自己資本比率が下がる圧力を小さくできるということで、確かに地銀・信金にとっては自身の財務的な見地でより融資に積極的に取り組める理由になり得ます。

 

バーゼル規制を、国内ではより柔軟な運用をする、株式に対してはより厳しく、融資に対してはより甘く評価していいから、自己資本比率を保つために株式よりも融資にした方がいいよ、だから融資を増やしてね、ということが金融庁の狙いなわけです。

融資を得られる企業と、そうでない企業の差が広がる

さて、実際のところどうだろうか、と考えてみますと…、この規定は、確かに地域金融機関が中小企業向け融資を行うための動機にはなるのですが、何でもかんでも、ということでもないのでしょう。

 

極端な言い方になってしまいますが、金融機関にとっては「倒産されてしまえば100%の貸倒れになることは、何も変わらない」からです。

 

金融機関からみれば、企業としての存続と発展を信じられない(そして、最終的には倒産してしまう)融資先なら、途中の期間の貸倒引当率が少し低く済んでも最終的には100%、全額の貸倒となるため長期的には同じことです。そのような評価の先に「コロナで大変だったから」といって今後も融資をする、とはどうしても考えられません。

 

あくまで、一定の存続への評価を得られた企業に限って、これまで以上の融資対応をしてもらえるようになる、という点で誰でも支援を受けられる制度ではない、ということは念頭に置かなくてはなりません。

 

コロナ対策融資を最後として、今後は融資を受けられる企業、受けられない企業というのは明快に差がついていくことの表れと捉え、アフターコロナへの準備をしていくことが肝要です。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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