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令和3事務年度金融行政方針が発表されました

金融行政方針のポイント

2021年8月31日、金融庁より金融行政方針が発表されました。毎年この時期に発表される金融行政方針は、マスメディア等で採り上げられることはあまりないのですが金融庁の意思表示であり、その後の金融庁の活動に反映されるため、今後の金融行政を見込む上では欠かせないものです。

 

中小企業と銀行の関係性に大きく影響するポイントをまとめていきます。

コロナを乗り越え、力強い経済回復を後押しする

コロナ禍による悪影響を受けた経済社会を、金融機関が支えられるように、行政として万全を期す、と明記されています。現状以上の融資制度が創設されるとは感じられませんでしたが既に実施されているコロナ対策融資の返済条件の変更等は柔軟に対応されるようです。かつての「金融円滑化法」と同等の運用がされるのでしょう。

地域金融機関が地域の実情等を踏まえ持続可能なビジネスモデルを構築するように求めている

地域金融機関に対して、単に個社別の財務評価から融資可否を判断してきたこれまでのモデルから脱却して地域経済全体の将来的な発展を見越し、「資金投下を企画する」対応を求める、そのための経営戦略を持つことを求めています。銀行が企業に長期的な経営方針を持たせようとするように、金融庁も銀行に経営方針を持たせたいのでしょう。

金融機関による企業へのダメ出しも推進

一方、金融機関による企業へのダメ出しも推進されるようでそのままの引用をすると、

 

「金融機関等による事業者の経営改善・事業再生・事業転換支援等の取組みを促す」とあります。

 

以前より少しずつこのような内容の記載はありましたが、より具体的に、強い調子での言及となっています。

アメとムチの両方が見える

結局のところ、上記の三点目が主題なのかな、と感じます。「金融機関等による事業者の経営改善・事業再生・事業転換支援等の取組みを促す」この考え方は、一昔前なら中小企業が最終的にどうするか、というのは株主・社長が決めるもので、外部がどうこう言うものではない、として否定されてきたものです。

 

それを、「有力な債権者(特に再生フェーズにある中小企業の場合は)である金融機関が、中小企業を存続させるどうかの意思決定に積極的に介入する」ことへの大きな舵切りになります。

 

非常に極端な言い方ですが…、銀行員が「御社はもう会社を畳んで下さい」という台詞を吐いてもいい、ということですね。

 

コロナ禍による悪影響はカバーするけれどそもそも事業存続が見えない場合には、金融機関に主導権を取らせて企業を整理してもいい、そんなアメとムチが見えます。

 

金融行政としては、コロナ禍の後へ、既に動き出しているのです。中小企業もまた、自身の将来を自身で決められるくらいには状況を整えておく必要があります。「この会社は、地域に必要」と顧客に思われたいのはもちろん、銀行にも思われるように。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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