事業承継に伴い、マル保融資の連帯保証が解除できるようになる?
2013年に発表された「経営者保証ガイドライン」は、過剰な連帯保証が事業承継の障害となっていること等を鑑み、一定条件を満たした企業の借入について経営者(概ね代表取締役社長)の連帯保証解除を認めるためのものです。
既に運用がはじまって6年が経ち、私のお客様企業においても数社様が無保証での借入にシフトすることに成功していますが…、「マル保(保証協会保証付)融資」を利用していることで、無保証化が進まない・とても時間がかかる企業様も多い、というのが現場からの本音です。これは、プロパー融資の保証は外せても信用保証協会には元々保証解除という概念がないため、マル保融資が協調対応できないことが背景です。
信用保証協会の規定
私の銀行員の時の経験で申し上げれば…、社長のご兄弟が、法律上の責任はとれない水準にまで痴ほうが進んでしまったこと、そもそも保証(第三者)を差入れしているとはいっても経済力として返済する能力が既にないことから、信用保証協会に保証の解除をお願いしたことがあるのですが…、人道的な意味では、保証協会の担当の方は理解も同情もしてくれるのですが、それでも答えは「保証を解除する規定がないため、解除には応じられない」だったことを覚えています。「差し替えならば、対応できるのですが…」と。代わりの担保・保証人を入れないと、解除ができなかったのです。
他の方法とすれば、借替の申込の際に、保証人欄を変更記入して認可してもらうか、完済してしまうしかありませんでした。
銀行が保証解除を了解しても、保証協会が「規定がない」ため対応できない、そんな企業様は結構あるのではないかと感じます。
中小企業庁の、マル保融資保証解除に向けた発表
そんなおかしな状態に対して、ようやくメスが入れられることになりました。
中小企業庁の発表によれば、来年4月を目標として
- 事業承継時については、原則新旧経営者の両方からは保証を徴求しない
- 銀行のプロパー融資において経営者保証をとっていない場合には、マル保融資でも保証を不要とする
- プロパー融資で経営者保証をとっている場合でも、一定要件を満たしていればマル保融資として経営者保証を不要とする融資制度を創設する
こととされています。
これまで融資の経営者保証を解除しようとした場合にはマル保融資は完済する(プロパー融資のみに切り替える)、もしくは最低でも折り返し融資を停止して残高を落とす等の移行措置が必要になっていたものが、プロパー・マル保一体での検討が可能になる、という点で大きな前進ではないでしょうか。
保証の存在は、承継の障害になっている
今日、10数万社(以上)の企業が、「経営者保証の存在を理由にして事業承継をしない、廃業する見込み」との試算が明らかになっています(中小機構のアンケートより)。
それは、日本経済にとって雇用・事業・技術を無為に失うことであって政府としても対策が必要になっていることは間違いありません。
後継者(新経営者)に承継をするにあたっては、借入と保証の問題をどのようにクリアするのか、後継者に対して過剰な負担を背負わせることのない様に取り計らうことが、経営者の財務上の最後の役割なのでしょう。
「この会社の状態でダメだったなら、それは後継者自身の問題」と胸を張って言えるような状態、それが理想ですよね!承継貧乏になることで後継者様が縛られた経営になることのないように、万全の対策をおとり下さい。承継は、節税と法律だけではないのです。
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