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事業承継で発生する株式等のコストと融資について

「中小企業白書」によれば、中小企業経営者の年齢ピークは1995年に47歳であったものが、2015年には66歳にまで上昇しています。一方、経営者の引退時期は68~69歳とされていることから、まさにこれから、企業の承継ラッシュが起こると考えられているわけです。

 

後継者がいる場合、企業としての大きな課題は「株式をきちんとまとめて、譲り渡せるか?そのための財務・資金対策は?」ですが、どうも事前に十分な対策もされずに放置されている中小企業がまだまだ多いのです。

 

税制の優遇制度の活用や、融資による対策は、どこまで有効なのでしょう?

 

銀行は、企業の承継に対してどう考えているでしょうか?借り手である企業側は、承継の資金対策をどのように考えるべきでしょう?

 

実は…、「これまでの銀行の企業評価手法は、承継対応を考慮していませんでした」が正しいです。

銀行の財務評価は、承継リスクを考慮していない

ある意味、仕方のないことでもあります。なにしろ銀行にとって

 

  • 中小企業はそんなには倒産しない
  • 株式を譲り渡すための資金は、個人が十分にもっている
  • 後継者は親族、または社員の中に存在し、他親族は後継者に対して好意的で、経営に協力してくれる

 

ことは大前提であり、確かに昭和まではこの通りでしたから、あまり深刻に考えずとも銀行にとって困ったことにはならなかったのです。

 

ところが、今日では企業の倒産・廃業も珍しいことではなくなり、中小企業の経営には余裕がないため株式を譲り渡すための経営者個人資産が足りないことも頻発するようになりました(後継者問題につきましては、今回は割愛)。

制度(優遇税制や融資)としての対策

対策として、

 

  • 事業承継税制(認定を受けることで、株式贈与税・相続税が猶予・免除される制度)の改正
  • 事業承継コストに対応した融資制度

 

が生まれていますが、どちらも「それで全ては解決しない」ことに注意が必要です。

 

事業承継税制は非常に有効な制度ですが、あくまで税の猶予・免除であって、取引そのものに資金が要ることは変わりませんし、承継コストに対する融資は、

 

  • 運転資金と異なり収益≒キャッシュフローからしか返済できず借りられたとしてもその後の資金繰り負担になる
  • 総借入が膨らみ、財務評価が悪化する
  • そもそも、ある程度以上の財務評価がないと審査が通らないなかなか厳しいから融資を得たい、というのと矛盾しますが…

 

資金対策は優遇税制や融資に過度に依存しないで考えないと、承継完了の段になって資金がひっ迫し、融資が得られない会社に後継者が連帯保証を入れなくてはいけなくなる、そんなひどい状況を生んでしまうのです。

税と法律だけが承継対策ではない

承継の資金対策は、「その時に何とかできる」ものではありません。優遇税制を活用するのは、可能な限りは当然ですが融資で対応するには会社全体として「承継後」まで見据えた上で数年以上の長期的見地での計画が必須です。

 

承継貧乏になることで後継者様が縛られた経営になることのないように、万全の対策をおとり下さい。承継は、節税と法律だけではないのです。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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