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税務会計上の決算書では、新しい制度に適応できない!?

本来、決算書等の財務資料は企業の状態を理解し、改善策を練り上げるために使われるもの。近年では多くの会計ソフトは決算数値から財務指標を自動計算してグラフ化、ユーザーが確認することが可能です。

 

税理士先生やコンサルタントから、年度別に各種財務指標が並ぶ紙を受取り、その内容の解説を受けたことがあるのではないでしょうか。

 

例えば、

 

  • 流動比率は200%欲しいが、年々低下して170%になってしまった、これは改善ポイントですね
  • 経常利益と売上の比率は、御社の業界では平均で3%ですが、御社はそこに届いていませんね
  • 借入は月商の6ヶ月くらいありますが、これ以上は借入が難しくなっていくと思われます
  • 月商比での棚卸資産(棚卸資産回転期間)が増加していますが、減らす方策はありますか?

 

といった具合でしょうか?が、全く、何の役にも立っていない、分からない、だからどうした、としか思えない社長様が多いものです。

中小企業経営者の大半にとって「決算分析」は役に立っていない

ある程度の財務指標は経営者にもご理解いただきたいというのが私の立場ではありますが、決算分析が詳しいほど、業績がよい、というわけでもありません。

 

まずは、「決算分析上の指摘が、全く腑に落ちない」原因を理解し、排除するところからはじめるべきでしょう。問題点を確認して、脱却しましょう。

決算分析の財務指標が役に立たない3つの原因

1.簿価と時価(実態)に違いがあれば、補正しなくては意味がない

税務上の決算書≒税務会計においては問題のないものですが経営として自社の内実を知ろう、というのならば時価と大きな開きのある簿価から財務指標を算出しても実態からかけ離れてしまうのは当たり前です。

 

ただし、この点はもはや有名なので、今回はこれ以上触れません。

2.借入の仕方が、財務指標を狂わせる

メルマガでも何度か触れてきていますが、「保証協会の長期」でばかり借入を行い、短期借入の導入をしないでいると一見流動比率をはじめとした財務指標は良くなるものの、毎月の分割返済の金額が増加することで、資金繰りが悪化することが、多々あります。

 

短期借入で、特に利払いのみの継続を前提にした資金調達が一定量、具体的には所要運転資金額程度にはあるべきなのにそうなっていないことは、「表面上の財務指標をよくしようとして、結果資金繰りを悪化させている」のです。

 

よって、資金繰りの安全性を示す流動比率がよくとも資金繰りは苦しい、そんな会社が随分と増えました。

3.本当の事業収益はどれだけあるの?

こちらも最近メルマガのテーマで挙げられる、実質の利益に関するポイントですが、一過性の損益(特に損失)を特別利益に計上していなかったり過去の仕入の処分損が原価の中で処理されていたりすると税務上は問題なくとも、企業の内実を知るという意味では実際の期間損益を知ることが難しくなります。

漫然と決算書をつくるだけでは、もう評価が得られない

これから必要な決算書上のポイントは

 

  • 本業での「実態の」利益が、どれほどあるか
  • 実態での債務超過がある場合、どれくらいの期間で解消できるか

 

に重きが置かれます。ただ帳面上の利益が出る・出ないだけでは、足りなくなってしまうのです。

 

また、銀行を相手にするかどうか自体が結果です。経営者が自分で、財務指標に納得して改善するべき点を見出し、成果を確認できることが先なのでしょう。それでこそ、銀行にも説明ができるのですから。

 

実情を反映できる会計処理を行うことは、経営者の安心に繋がるものです。少しでも思い当たることのある方は、お近くの専門家に確認して対策をはじめられるとよいでしょう。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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