「ダム経営」から学ぶ社長の「お金」との向き合い方、考え方
日曜日に自宅で京セラ名誉会長稲盛和夫氏の著書を読んでいる時のことです。その著書の中で考えさらせるエピソードがありましたので紹介させて頂きます。
ある時、稲盛和夫氏が松下幸之助氏の「ダム経営」の講演を聞きに行かれた時の話です。「ダム経営」とは一言で言うならば余裕のある経営と言ったところでしょうか。その講演の中で、松下幸之助氏は経営について「経営はダム経営を目指さなければならない」といったような主旨の講演をされ、稲盛和夫氏は非常に感銘を受けられたようなのですが、最後の質問時にある中小企業経営者が「そのようなことはわかっている。だから我々中小企業はどうしたらいいのだ。」と質問とも抗議ともとれるようなことを言われたようです。
流石の幸之助氏もお困りになった様ですが、最後に「このようになりたいと思うことですな」とお答えになったそうです。実にシンプルで分かりやすい答えであると思います。
問題はその思いに対する度合いと言うべきか、レベルと言うべきでしょうか、私の知りえる周りの社長を見ていると思い込みが激しい人(思いが強い人)ほどこうなりたいと行動を起こしていることに気づかされます。
私共のお客様の中には、成長期・再生期といったステージこそ違うにしろ、こうなりたいという「思い」を持って「行動」、言い換えれば社長業をされているに違いありません。故に是非ともその思いを貫いてこうなりたいと思う会社にして貰いたいと思います。
今日は、「お金」について少し話をしてみたいと思います。
「ダム経営」から学ぶ社長の「お金」との向き合い方、考え方
経営の3大資源と言えば「ヒト・モノ、サービス・カネ」と言われます。最近ではこれに「情報」が加わり「人・物、サービス・金・情報」と言われるようになりました。
1.1番大事なものは「人」でしょう。
2.2番目に大事なものは「物、サービス」でしょう。
3.そして3番目に大事なものが「金」になります。
多くの社長は、一様に一番大切なものは「人」であると言います。小生も同じ考えです。しかし、その一方で角度を変えて考えてみることも必要です。
人づくり・物、サービスづくりにはどうしても「お金」が必要になります。
会社経営者(社長)は、重要で大切な「人づくり、物・サービスづくり」に資金を供給しなければなりません。その資金が枯渇すればたちまち「人・物、サービス」が創造することができなくなります。
もしここに資金があったら次の一手が打てるのに・・・と言った言葉を耳にしますが、故に一番大事なものは「お金」であると表現される社長も少なからずいらっしゃいます。
そこで、お金に強くなるために、「出来るだけ資金を潤沢に持つ」決意を持ってはどうでしょうか?
いや、持つべきです!
先程の冒頭でも書きましたが、松下幸之助氏の言う「思い」があれば、例え再生期で今資金繰りに苦労していても、決意・思いを持って3年間努力すれば知恵も出て、必ず資金繰りから解放できます。
そこで「出来るだけ資金を潤沢に持つ」ための考え方を纏めてみます。
利益は出来るだけ出して下さい
・会社は大・中・小を問わず社会の公器です。従って、「利益を出すことが貢献になる」と言うことを理解して下さい。
・利益を正々堂々と追求して下さい。
・節税や減税措置は上手に活用して下さい。
・「利益が出ると税金を払わなければならい」と言う思考は、利益を嫌う結果になります。
1,000万円の税引き前利益は、半分弱の税金を納めますが、半分強の利益が残ります。しかし、過度の節税は結果的に利益を少なくすることになります。この利益に対する考え方を続けてしまったばかりに折角の事業の芽を摘んで、再生に陥った会社様も多く存在します。
上記のことを踏まえた上で、
金融機関からの借入を積極的に行いましょう
・無借金経営は、先程の「ダム経営」に例えればそれが完成した時に可能になります。
・可能な限り借入(出来るだけ長期で)を行い、手元キャッシュを増やして下さい。
※借入が可能であると言うことは、金融機関がその会社を認めている証でもあります。
・利益償還が出来ない場合、約定返済が進むと手元資金が減少していきます。そのためにも可能な限り利益を出し、定期的な借り換えを行って下さい。
・金融機関から過度に融資を受けて、資金が余る時のリスクは余分な金利を支払うことです。
・必用最低限の資金のみを調達し、余分な資金を調達しない時のリスクは、資金が枯渇した時に継続が困難になることを理解して下さい。
※資金の枯渇→利益が出ていない、赤字になっている等→金融機関の貸す対象にならない
・金融機関からの借入を積極的に行える会社の体制(利益を出すことも含めて)を整えて下さい。計画書、試算表ナシでは良好な金融機関とのお取引はできません。
社長業には様々な資質が要求されます。そして、経営には様々な判断基準があります。とりわけ「お金」との付き合い方、考え方はその要諦になります。その意味でも「お金」については、しっかりとした考え方を持ちたいものです。
執筆:沖原厚則
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