再生期に見受けられる経営体
先日、関西へ帰省している際、家でテレビを見ていると「P/L脳」について取りあげている番組がありました。
番組の内容は数名のパネラーがテーマに添って議論をするのですが、この番組では日本企業の大部分がこの「P/L脳」という考え方を踏襲しており、この考え方が企業をダメにするという趣旨の内容でした。
そもそも「P/L脳」とは、財務諸表の中の損益計算書の数字を目的化することを指し、例えば薄利多売をしてでも売上を伸ばし、それでいて利益を確保しなければならない。又は、固定費削減に血眼になってでも利益は死守をしなければならないと言った考え方を指します。
本来企業の役割は、創出した利益と外部からの資金調達で、事業投資を行い、決して目先の損得に振り回されることなく、将来に稼ぐと期待されるものに積極的に資源配分をするべきであると言うことなのですが、なるほど理屈では理解できるものの、この経済環境下で経営資源が脆弱な中小企業の経営者から見ると違和感を覚える事でしょう。
ただ一つ言える事は適正な納税後に創出される「利益」は事業を続けていく為の条件であることは間違いないでしょう。
今日は、企業のライフサイクルを通じて成長期から再生期に見受けられる経営体についてお話をしたいと思います。
大半の中小企業は、小資本、過小資本で経営を行っています。冒頭で「P/L脳」について述べましたが、少しのミスが致命的にならない為にも実態を正面から受け止めて、資本が積み上がるまでは出来るだけリスクを取らない経営を行うべきであると考えます。
資本が過小であることを考慮しないで、成長期に大きく攻め込む経営はリスクを伴います。
例えば、事業領域を広げ、安易に人を増やす、事業所を広げる等々、このタイミングを間違えると命とりになります。
実力以上に攻めに転じると後に経営体が『前のめり』になります。この段階における行き過ぎるデメリットは遅れるデメリットよりもはるかに大きくなります。
会社が成長期を経て次の成熟、再生期から出来る限り短い時間で脱出をする為にも堅実に事業を攻めて欲しいものです。
攻める為にはどうしても余力が必要になります。言い換えれば自己資本を充実させることが条件になります。まずは資本が積み上がるまでは『身の丈にあった経営』をお薦めします。
『前のめり』している経営体には
以下のような兆候、症状が現れます。
- ぎりぎりの経営をしていると感じる。
- 緊張感が拭えない。
- 売上が落ちるとすぐに経営が厳しくなる。
- 頑張っているのに「お金」が増えない。
- 資金繰りに忙しい。
- 少し攻めすぎた(事業領域を拡大)と感じる又は反省している。
いかがでしょうか?
事業を攻め過ぎず、(事業領域を拡大しない)ビジネスモデルを早期に固めることなく、経営体の症状を小まめに把握して、上記に記した兆候、症状の変化に対応するためにも柔軟性のある企業を維持して欲しものです。
執筆:沖原厚則
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