値決めは経営の要諦
数年前、小生が地方都市のある販売業の会社を担当する事になった時の話です。この会社は成長力、収益力とも非常に優れた業績の良い会社でした。
ある意味、我々が事業として担っている分野の会社様ではなかっただけに些かの疑問もあり一回目の訪問の際に「なぜ今回弊社とご契約をされたのですが?」と問いかけてみました。
すると、その経営者からの返答はお陰様で業績は上向いてはいるが、ここで自らの意思で「踊り場」を作って先行きに備えたいとの事でした。(この会社は現在上場準備に入っています)企業にはライフサイクルがあります。
創業から成長期にかけて多くの会社では、成長が続くものとして経営の舵を取るものです。しかし、必ず歩留まりは来るものです。勇気のいる考え行動ではありますが、到来する成熟、再生期の備えとして、「踊り場」を作り先行きのことを考えるのも必要でことであるのかもしれません。
前回に引き続きなぜ企業のライフサイクルに事業の再生期が必要となるのか?又、この時期どのように事業を運営すれば良いのかを考えて見ましょう。
先回、皆様の経営は、本当はもっと上手くいくはずであるにも関わらず上手くいっていないとしたならば、ブレーキをかけているものがあるに違いないと述べました。
その一因として考えられるのが、商品、製品、サービス等の『分散』であり、これを絞り込む事により『Simple化』していくことが処方になるのではないかと書き記しました。
それでは「値決め」についてはどうでしょうか?
京セラ会長の稲盛和夫氏も経営は値決めだといっておられるように、「値決め」は経営の要諦になります。成長期から再生期にかけて如何に「値決め」が経営に与えるダメージを与えているのかを考えなければならない時期と言えるでしょう。
経営者はいつの時も忙しく、繁盛している状態でいることを望みます。故に、付加価値を追求した価格設定をすることもよりも価格を抑えて商品、サービスを市場に流通させようと考えてしまいます。しかし、薄利多売が通用するのは大企業の論理であり、中小企業の論理ではないのです。
大企業には多売が可能です。中小企業では多売をすることは極めて困難です。多売が出来ない上に薄利であれば当然ながら経営にダメージを与えてしまいます。
その上、本来持ち合わせている創造力を枯渇させ、創業時にあった付加価値の高い商品、サービスを追求していく姿勢、知恵さえも奪っていきます。又、値決めに対する姿勢が弱気になればこれは、利益管理も曖昧になる病を誘発する結果にも繋がります。
今現在、
- 忙しくしているにも関わらず、儲からない。
- 新しい商品、サービスを創造できていない。
- 利益はでなくても良いと思うことがある。
- 値上げをしたいと思っていてもできない。
- 常にぎりぎりの経営をしていると感じる。
と思われていれば、経営の要諦である「値決め」について果敢に挑んでもらいたいと思います。生産性向上を言われている昨今、値決めを再考する事でその生産性を是非とも向上させて頂きたいものです。
それでは、上手くいっていないとしたら、ブレーキをかけているものがあるに違いないのです。
このブレーキを疾病と例えるとしたら、その原因・治療・予防の方針を知れば、経営に変化が現れることになるでしょう。そこで成長期から安定、再生期にかけて経営にブレーキをかける企業が患う疾病について考えてみましょう。
執筆:沖原厚則
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