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銀行員にとっての「目利き力」

融資対象となり得る企業に対して興味があれば質問して知ろうとしますが、興味がなければ基本以外の質問はせず、さっさと帰るのが法人営業の銀行マンです。

 

よく金融機関の本部の方からよく耳にする言葉があります。

 

経営者に何を聞いてよいかがわからないとまさに取引先企業に興味がないのです。

 

なぜそのような状況になったのでしょうか。以前は、目利き力はあったはずです。その要因は金融検査マニュアルと信用保証制度の拡充という二つです。

 

つまり、興味を持って取引先企業が何をしているか聞かなくても融資が実行できたのです。そのため、近年この二つの要因は問題視され、大きな変革に取り組んでいることは、ご承知のとおりです。

 

そして現場では、目利き力をつけさせるため、担当者に事業性評価シートと言われるA4判の1枚用紙を与え、スキルの統一を図りました。しかし現実は、担当者はそれを埋めることに必死になり、質問の仕方は枠を埋めることが優先し、淡々と聞いて深堀りすることはありません。

 

これでは、銀行員自らが考えて質問する力は養われず、目利き力は育ちません。また、そもそも、何のために中小企業経営者に質問をするのかという真意を理解しておらず、目的と手段が入れ替わっています。

 

目利き力というものは、日々の実践のなかで体得するものであり、今日一日学習したからといってすぐに身に着くものでもありません。地道な継続的努力が必要です。しかし、現場ではこの能力を早く効率的に身に着けることはできないかを優先しています。急がば回れという言葉があるように、教育のあり方を見直した方がよいのではと感じます。

 

2016年2月金融庁は、

 

「一時的に赤字や債務超過に陥った経営難の中小企業にも成長融資を」と、

 

日銀のマイナス金利対策を受け、全国の地方銀行にこう要請し、「事業を見る目利き力を生かせば不良債権にならない」と融資拡大を後押ししました。また、同庁は「短期継続融資」と呼ばれる運転資金向けの融資を提案しました。

 

数ヶ月おきに金融機関が事業内容をよく精査し、短期間で融資をつないでいく方法です。しかし、金融機関は不良債権化するリスクが比較的高く、短期間で煩雑な審査を行わなければならない手間を考えると、なかなか踏み込めないと判断をしたようにみえます。つまり、目利き力は依然として発揮されていないのです。

 

それから数年が経過しました。今一度、取引先企業が何をしているか興味を持ち、そして目利き力を発揮することの意義を再認識し、経営者の心に寄り添った経営の支援に取り組むことに期待をします。

 

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この記事の著者

  • 野上 智之

    公立大学法人北九州市立大学卒業、大手システム会社を経て、教育研修会社での新規部門立上げや西日本責任者としての実践により、収支損益の黒字化と人財育成がなければ、企業は元気にならないという強い信念のもと中小企業に特化した経営コンサルタントに転身。現在も10社を担当し各地でセミナーや研修を実施したり、地域金融機関との連携を実施。行政書士試験合格、宅地建物取引士、動産評価アドバイザー(TAA)、中小企業庁ミラサポ専門派遣登録専門家、プッシュ型事業承継支援高度化事業登録専門家(中小企業庁)、再生支援ネットワーク会議メンバー(広島)

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