M&Aをすると繰越欠損金はどのようになるのでしょうか?
- M&A全般
M&Aと繰越欠損金の扱い
「M&Aをすると繰越欠損金が消えるって本当ですか?」という質問をよくお受けします。
そもそも繰越欠損金とは、会社が赤字を出したとき翌年から10年間その赤字を繰り越し、黒字と通算して法人税の支払いが控除されるという制度であり、大きな赤字を出してしまった企業の再生を支援する意味合いがあります。
以前、この繰越欠損金はM&Aのような会社買収や合併を行ったときに、M&A先へ引き継ぐことができる制度がありました。
ところがこの制度を利用して、M&Aした赤字会社の業務を引き継がない節税目的のM&Aが行われたのです。
そのため、このようなM&Aを防ぐべく、赤字会社のM&Aにおいて一定の条件を満たす場合を除いて繰越欠損金が消滅するように法改正され、この条件を満たさない赤字会社のM&Aにおいては繰越欠損金を利用することができなくなりました。
M&Aで繰越欠損金を活用する方法
それでは、赤字会社をM&Aしても繰越欠損金は使えないのか、といえばそうではありません。
M&Aには合併によるM&Aと買収によるM&Aがありますが、それぞれ一定の条件を満たすことでM&A先でも繰越欠損金を利用することができるのです。
まず合併によるM&Aにおいては、M&Aが「適格合併」の条件を満たすことで繰越欠損金を活用することができるとされており、これは以下の5つの条件からなります。
1.従業者引継ぎ条件:被合併会社の80%以上の従業員が引き継がれること
2.事業継続条件:被合併会社の主要事業が合併後も引き継がれること
3.事業関連条件:被合併会社の事業と合併先の事業に関連性があること
4.事業規模条件:被合併会社の規模と合併先の規模が5倍以上差がないこと、もしくは合併後会社の役員に被合併会社の役員が就任すること
5.株式継続保有条件:被合併法人の株主で、合併後の合併法人株式の全部を継続保有する被合併法人株式数の合計が、被合併法人の発行済株式等の総数の80%以上であること
一方で、買収によるM&Aにおいては、以下の条件に該当しないことが繰越欠損金の条件となります。
1.休眠会社でが新規に事業を開始すること
2.M&A前の事業を止め、その売上等の約5倍を超える資金を新規に借り入れること
3.株の50%超を保有する個人や関連会社がM&A前の事業の約5倍を超える資金を借り入れること
4. 1~3にあたる場合に適格合併を行う、または赤字会社の残余財産が確定すること
5.被M&A会社の役員がすべて退任、かつ社員の20%以上が退職し、新事業がM&A前の事業規模の約5倍を超えること
このようにM&Aにおいて繰越欠損金を利用するためには条件の確認が必要となりますが、基本的に、M&A先の事業とのシナジー効果を期待したM&Aにおいては繰越欠損金の利用ができる条件となっています。
赤字でありながら魅力的な事業を持つ会社に対するM&Aを考える上で、繰越欠損金の利用は有利な条件になると言えるのです。