新しい市場を生み出す中小企業のブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略とは、従来は存在しなかった新しい価値を作り、新たな市場を創造する経営戦略のことです。昨今は、中小企業の経営者の方の中にも成熟する市場の中で新たな市場を生み出していきたい、既存の事業を見直して違った形で革新的な発想をしたいというニーズが多くなっています。そのような場合、ブルーオーシャン戦略の考え方は非常に役立つと考えられます。
今回は、ブルーオーシャン戦略の概要についてご説明します。
ブルーオーシャン戦略の概要
ブルーオーシャン戦略とは、これまでとは全く違う、新しい価値を作り、新しい市場を創り出すことです。具体的な事例をご紹介しましょう。
動画で解説
※切り抜き動画をyoutubeで公開しています。まずはこちらをご覧下さい。
ZOZOタウン
ZOZOタウンは、セレクトショップを自社サイトに集め、オンラインで洋服を購入できるようにしたサイトです。ZOZOタウンが生まれた当時は、まだ、サイズ感の分からない洋服を試着ができないオンラインというスタイルで販売する思想はありませんでした。
しかし、ZOZOタウンは店舗を持たないため、比較的安い運営コストで洋服の販売を実現し、さらにリアル店舗ではなかなか買い物ができなかった層の需要を満たす取り組みとなりました。これはまさにブルーオーシャン戦略の考え方が入っている事例です。
QBハウス
QBハウスは、1時間から90分の時間をかけて、3,000円~5,000円のコストで髪を切ることが常識だったときに生み出された、10分でカットだけを提供するという営業スタイルで店舗を展開しました。
当時、理容・美容業界では、シャンプーやマッサージをせずに、カットするだけというサービスはお客様に失礼にあたるという考えが主流でした。しかし、予約なしで気軽にカットだけをしたいというニーズもあるのではという点に着目したのがQBハウスのサービスです。
これも、既存の市場ではなく、新たな発想で新たな市場を生み出したブルーオーシャン戦略が成功した事例の一つです。
ブルーオーシャン戦略は業界内の常識を破壊するところから始まる
ブルーオーシャン戦略では、それまで業界内では正しいと思われていた視点を客の視点から見直し、常識を破壊して新しいサービス・商品を開発していく手法です。
ブルーオーシャン戦略を実現できれば、未だない、新たな市場が創出できる可能性があります。つまり、成熟した市場で活路を見いだせずにいる中小企業が新しく市場を開拓できれば、競合相手のいない成長市場を創り出せるというわけなのです。
ブルーオーシャンとレッドオーシャンの違いとは
レッドオーシャンは、ブルーオーシャンの対極にある市場で、競合相手が非常に多く存在し、激しい競争が行われている市場です。ブルーオーシャン戦略とレッドオーシャン戦略には次のような違いがあります。
レッドオーシャン戦略
レッドオーシャン戦略では、価値とコストはトレードオフの関係にあります。そのため、何らかの価値を高めるためにはコストがかかり、リーズナブルな価格を提供するためには、何かしらを諦めなければなりません。したがって、競合他社が多い中で勝ち抜くためには、他社と差別化をして商品の価値を上げるか、コストを下げて価格面での差をつけるか、この2つの選択の内どちらかを選んで企業活動をすることになります。
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略は、ライバルのいない新しい市場を作る発想からスタートします。
買い手から見た価値に注目して新しい需要を作るため、価格とコストのトレードオフの関係を打ち壊し、差別化と低コストを同時に実現する企業活動が進められるようになります。
ブルーオーシャン戦略を成功させた任天堂の例
任天堂は、日本を代表するゲームメーカーです。ゲーム市場は1997年をピークに減少し、2003年時点のゲーム市場はピーク時の約半分にも縮小していました。
そんなときに任天堂が発表したのが新しい発想のゲーム機「Wii」でした。2006年末に発売されたWiiは大ヒット商品となり、任天堂の時価総額は1年で倍以上も上がったのです。
Wiiの成功の背景には、ブルーオーシャン戦略ともいえる任天堂の戦略がありました。
ゲーム業界の常識を覆す新しい発想
ゲームは子どもが遊ぶものであり、ゲーム会社の顧客は子どもであると考えられていました。しかし、任天堂では、過去にはゲームをしていたものの今はゲームをしなくなってしまった若い層や、子どもにゲームをしている姿を見せたくないと考える親の世代、ゲームは孫に買ってはあげるもので自分が楽しむものではないと考える高齢者層を新たなターゲットとしたのです。
顧客ではないノンカスタマーの層は、ゲーム業界にとってまさに競合のいないブルーオーシャン市場でした。任天堂は既存の調査に頼らず、自社でノンカスタマーの声を直接的に聞き、商品開発に役立てました。特に、ゲームを買うときに大きな影響力を持つ母親の声を徹底的に調べ、その声を商品開発に反映させたのです。
従来の顧客を対象に開発を進めた結果、差別化が難しい状況に
Wiiが発売される前は、各ゲームメーカーは、ゲームのヘビーユーザーのニーズに応える戦略を取っていました。よりリアルでスムーズなグラフィックの提供やクリア難易度を上げる複雑なコンテンツの制作、完成度の高いゲーム音楽の開発、複雑な動きに対応できるコントローラーの開発などに力を入れていたのです。
しかし、ゲームのスペックが上がれば価格は高くなり、ライトなゲームユーザーやゲームをしない層にとっては、ゲームはよりかけ離れた存在になっていました。そして、ヘビーユーザーをターゲットに開発を進めていった結果、各社の開発レベルは同じように高くなり、他社との差別化が難しくなっていったのです。
買い手の価値を見つめ直した任天堂
任天堂は成熟した市場の手詰まり感を感じ、これまでは顧客ではなかったノンカスタマー層に注目し、ゲームをしない理由を調査しました。一般的に、マーケティングをする際には顧客に対して調査を行いますが、任天堂では顧客ではない、ゲームを購入しない層を調査対象に選んだのです。
その結果、ノンカスタマー層は、その当時の主流であった難易度の高いゲームではなく、誰もが簡単に始められるシンプルなゲーム、一人ではなく家族で楽しめるゲーム、身体を動かしながら楽しめるゲームを求めていることが分かったのです。
価格ありきの開発
Wii開発にあたってのもう一つの特徴は、ボリュームゾーンを意識し、市場に受け入れられやすい価格を先に決める戦略を取った点です。ヒットさせるためには、30,000円以内の価格で販売できるゲームでなければならないという判断の下、30,000円以内で販売できる商品を作るという発想で開発が進められました。
メーカーの場合、メーカーが作りたいものを作り、その上に利益を乗せして価格を決めるやり方が主流です。しかし任天堂では、メーカーが作りたいものではなく買い手が求めるもの、買い手が求める価格を先に設定し、その価格を実現するための仕様を作り込んでいったのです。
まとめ
新しい価値を創造し、新しい市場を創造するブルーオーシャン戦略の考え方をご紹介しました。ブルーオーシャンは未開の地であり、ライバルも存在しない市場です。そんな市場を開拓できれば、中小企業であっても新たなビジネスチャンスを創造することができるでしょう。
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