適切な運転資金は何か月分?運転資金の目安と資金確保の手段を紹介!
今回は、売上が増加するとなぜ資金が必要になるのかについてお話しさせていただきます。売上が増加すれば、資金繰りがどんどんラクになると思ってみえる方はいませんか?
ベテランの経営者の方はその様に思われる方は非常に少ないと思いますが、事業を初めて行う経営者の方はそのように思ってみえる方もみえるかと思います。利益が継続して出てこれば、長期的にみればそのようになりますが、当面は逆の現象が起こるのです。例をあげてご説明させていただきます。
例えば卸売業を営んでいる場合、メーカーから商品を仕入し一度在庫として保有。その後、注文に応じ納品を行い売上高を計上(売掛金として)。
この場合は仕入が先行し、売上高が入金となっておりませんので、商品の仕入資金を立替えている状態となります。さらに商品を在庫として保有する事で資金が寝る状態(滞留)となり、売掛金の長さと在庫の量によって資金が必要となるのです。
反対に支払いを遅くすれば資金繰りはラクになるのです。つまり、回収は出来るだけ早く、支払は出来るだけ遅くする事で資金繰りはラクになり、運転資金は少なくてすむのです。これを計算式にあてはめると、
(売掛金+受取手形+棚卸資産(在庫))-(買掛金+支払手形)=経常運転資金
となります。次に立替期間について説明させていただきます。
売上条件が月末締めの翌々月払いとすると、平均を取って売掛期間は2.5ヶ月となります。在庫として平均月商の1ヵ月分を保有していると仮定。支払条件は月末締めの翌月末支払とすると、買掛期間は平均で1.5ヶ月となります。
これを上記の計算式にあてはめると、
売掛金2.5ヶ月+受取手形0+棚卸資産1ヶ月-買掛金1.5ヶ月+支払手形0=2ヶ月の立替期間が発生している事になり、これが必要運転資金額と言われるものです。
この2ヶ月の立替期間は売上が増加すれば月商も増える事から金額としても増加する事となりこれが増加運転資金と言われるものです。次第に利益を積み重ね現金が増加してくると運転資金の借入を減少させても現金で充当できるようになるのです。
以上で売上高が増加するとなぜ運転資金が必要になるのかのご説明になります。では続いて、運転資金の目安と確保の方法をお伝えしていきます
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目次
運転資金って何?基本を押さえよう
運転資金という言葉は耳にしたことがあるかもしれませんが、その本当の意味を理解している方は意外と少ないものです。ここでは、運転資金の基本的な概念について、わかりやすく解説していきます。
運転資金の定義
運転資金とは、企業が日々の業務を滞りなく行うために必要な資金のことです。具体的には、商品の仕入れ、従業員の給与、光熱費、家賃などの支払いに充てるお金のことを指します。
例えば、飲食店を経営しているとしましょう。食材の仕入れ、スタッフの給与、店舗の家賃、水道光熱費など、お店を開けるために必要な費用がありますよね。これらを賄うためのお金が運転資金なのです。
運転資金は、企業の血液のようなものだと考えてください。血液が体内を循環しているように、運転資金も企業内を循環し、ビジネスの様々な部分に必要な栄養(お金)を届けているのです。
固定資産との違い
ここで重要なのが、運転資金と固定資産の違いを理解することです。運転資金は日々の経営に使われる流動的な資金であるのに対し、固定資産は長期的に企業の事業に使用される資産を指します。
固定資産の例としては、店舗や工場の建物、機械設備、車両などが挙げられます。これらは一度購入すると長期間にわたって使用され、すぐに現金化することは難しいものです。
一方、運転資金は常に動いています。商品を仕入れ、それを販売して代金を回収し、また次の仕入れに充てる。このサイクルを繰り返すのが運転資金の特徴です。
中小企業の経営者の皆さんにとって、この違いを理解することは非常に重要です。なぜなら、固定資産に過剰投資してしまうと、日々の運転に必要な資金が不足してしまう可能性があるからです。バランスの取れた資金配分が、健全な経営には欠かせません。
必要な運転資金はいくら?計算方法を解説
運転資金の重要性は理解できたものの、「では具体的にいくら必要なのか?」と疑問に思われる経営者の方も多いでしょう。ここでは、運転資金の必要額を簡単に算出する方法をご紹介します。
売上高による簡易計算法
運転資金の簡易的な計算方法として、売上高を基準にする方法があります。この方法は、業種や企業規模に関わらず、おおよその目安を得るのに適しています。
計算式は以下の通りです。
必要運転資金 = 年間売上高 ÷ 12 × 運転資金月数
ここで重要なのは「運転資金月数」です。これは業種によって異なりますが、一般的に以下のような目安があります。
製造業:2〜3か月分
卸売業:1.5〜2か月分
小売業:1〜1.5か月分
サービス業:1〜2か月分
例えば、年間売上高が1億2000万円の製造業を営んでいる場合、必要な運転資金は次のように計算できます。
1億2000万円 ÷ 12 × 3 = 3000万円
月商の何か月分が目安になるのか
一般的には、2〜3か月分の月商が運転資金の目安になると言われています。ただし、これはあくまで平均的な数字であり、業種や事業特性によって大きく異なる場合があります。
例えば、以下のような要因で必要な運転資金の月数が増える可能性があります。
1. 売掛金の回収サイクルが長い場合
2. 在庫を多く抱える必要がある業種の場合
3. 季節変動が大きい業種の場合
4. 新規事業を立ち上げる際の初期投資が必要な場合
重要なのは、自社の事業サイクルをしっかりと把握し、それに合わせた運転資金を確保することです。売上の入金から仕入れの支払いまでの期間が長ければ長いほど、より多くの運転資金が必要になります。
また、成長期の企業では、売上の増加に伴い運転資金も増加します。そのため、定期的に必要運転資金を見直すことが経営の安定につながります。
業種別・規模別の運転資金の目安
運転資金の必要額は、業種や企業規模によって大きく異なります。ここでは、主要な業種ごとの特徴と、中小企業と大企業の違いについて詳しく見ていきましょう。
製造業、卸売業、小売業、サービス業の違い
業種ごとに必要な運転資金の目安は異なります。これは各業種の事業サイクルや資金の回転速度の違いによるものです。以下、主要な業種別の特徴を見ていきましょう。
製造業:一般的に3〜4か月分の月商が必要です。原材料の仕入れから製品の販売、代金回収までの期間が長いため、多くの運転資金が必要となります。特に、受注生産型の製造業では、さらに多くの資金が必要になる場合があります。
卸売業:通常2〜3か月分の月商が目安となります。仕入れから販売までの期間は製造業ほど長くありませんが、在庫管理や信用販売のための資金が必要です。
小売業:1〜2か月分の月商程度が一般的です。商品の回転が比較的早く、現金売上が多いため、他の業種と比べて少ない運転資金で済む傾向があります。ただし、季節性の高い商品を扱う場合は、その分多めに確保する必要があります。
サービス業:1〜2か月分の月商が目安です。商品在庫を持たないため、比較的少ない運転資金で事業を回せます。ただし、人件費の占める割合が高いため、固定費をカバーするための資金は必要です。
これらの目安は、あくまで一般的な傾向です。実際には、自社の事業モデルや取引条件に応じて、必要な運転資金を算出することが重要です。
中小企業と大企業の違い
企業規模によっても、必要な運転資金の特徴が異なります。
中小企業の場合、大企業と比べて相対的に多めの運転資金が必要となる傾向があります。その理由としては以下が挙げられます。
1. 資金調達力の違い:中小企業は大企業に比べて資金調達の選択肢が限られています。そのため、不測の事態に備えてより多くの運転資金を手元に置く必要があります。
2. 取引条件の違い:中小企業は取引先との力関係で不利な立場に置かれることが多く、支払サイトが短く、回収サイトが長くなりがちです。これにより、資金繰りの負担が大きくなります。
3. 経営の安定性:大企業に比べて経営基盤が脆弱な中小企業は、予期せぬ事態に対する備えとして、より多くの運転資金を確保する必要があります。
一方、大企業は資金調達力が高く、取引条件も有利なため、相対的に少ない運転資金で事業を回すことができます。また、複数の事業や部門間での資金融通も可能です。
中小企業の経営者の皆さんは、これらの違いを認識した上で、自社の状況に応じた適切な運転資金の確保を心がけましょう。次のセクションでは、運転資金を確保するための具体的な方法について解説していきます。
運転資金を確保するための5つの方法
運転資金の重要性を理解したところで、次は具体的な確保方法について見ていきましょう。ここでは、中小企業の経営者の皆さんが実践できる5つの方法をご紹介します。これらの方法を組み合わせることで、より効果的に運転資金を確保できます。
借入金の活用
借入金は運転資金を即座に確保する最も一般的な方法です。銀行融資やノンバンクからの借入、政府系金融機関の活用など、複数の選択肢があります。
ただし、借入には返済義務が伴うため、返済計画を綿密に立てることが重要です。また、自社の財務状況を正確に把握し、適切な借入額を判断することが大切です。
売掛金の回収期間短縮
売掛金の回収を早めることで、手元資金を増やすことができます。具体的な方法としては以下があります。
・請求書の早期発行
・回収条件の見直し交渉
・早期入金へのインセンティブ提供
ただし、取引先との関係性を損なわないよう、慎重に進める必要があります。
3. 在庫管理の最適化
過剰在庫は運転資金を圧迫する大きな要因です。在庫を最適化することで、資金の滞留を防ぐことができます。
・需要予測の精度向上
・在庫回転率の向上
・不動在庫の処分
これらの施策には、適切な在庫管理システムの導入が効果的です。
仕入れ条件の見直し
仕入先との交渉により、支払条件を改善することで運転資金の負担を軽減できます。
・支払サイトの延長交渉
・量的割引の獲得
・取引先の多様化
ただし、こちらも取引先との良好な関係維持に留意しながら進めることが重要です。
経費削減の工夫
不要な支出を抑えることで、運転資金の確保につながります。ただし、闇雲な削減は避け、適切な分析に基づいた削減が必要です。
・固定費の見直し(家賃、人件費など)
・変動費の最適化(原材料費、外注費など)
・業務プロセスの効率化
これらの方法を実践するには、自社の財務状況を正確に把握し、適切な戦略を立てる必要があります。専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な運転資金の確保が可能になるでしょう。
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運転資金不足に陥らないための日々の管理ポイント
運転資金を適切に確保することも重要ですが、日々の管理を怠ると突然の資金不足に陥る可能性があります。ここでは、中小企業の経営者が日常的に意識すべき管理ポイントについて解説します。
資金繰り管理の重要性
資金繰り管理は、企業の資金の流れを把握し、運転資金不足を未然に防ぐための最も重要なツールです。以下のポイントに注意して、日々の管理を行いましょう。
1. 日次の現金残高確認:毎日の締めで現金残高を確認し、予定外の支出や入金遅れがないかチェックします。
2. 週次の入出金予定確認:翌週の入金予定と支払予定を照らし合わせ、資金ショートの危険がないか確認します。
3. 月次の資金繰り表作成:月単位での資金繰りを把握し、中長期的な資金の動きを予測します。
これらの管理を通じて、資金繰りの問題を早期に発見し、対策を講じることができます。特に、売上の季節変動が大きい業種や、大型の設備投資を控えている企業では、より細かな資金繰り管理が求められます。
予実管理のコツ
予実管理とは、予算(計画)と実績を比較し、差異を分析することで経営の舵取りを行う手法です。運転資金管理においても、予実管理は非常に重要です。
効果的な予実管理のためには、以下のポイントを押さえましょう。
1. 適切な予算設定:過去の実績や市場動向を踏まえ、現実的かつ挑戦的な予算を設定します。
2. タイムリーな実績把握:月次決算を迅速に行い、できるだけ早く実績を把握します。
3. 差異分析と対策立案:予算と実績の差異が生じた原因を分析し、即座に対策を講じます。
4. PDCAサイクルの徹底:予実管理の結果を次期の計画に反映させ、継続的な改善を図ります。
予実管理を通じて、運転資金の需要を正確に予測し、適切な資金確保や配分を行うことができます。また、予算未達の兆候を早期に捉えることで、運転資金不足に陥るリスクを大幅に軽減できます。
これらの管理ポイントを実践することで、運転資金不足のリスクを大きく低減できます。しかし、中小企業の経営者の方々にとっては、日々の業務に追われて十分な管理ができないこともあるでしょう。そんな時は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
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困ったときの資金調達の選択肢
運転資金の管理を徹底していても、予期せぬ事態で資金不足に陥ることがあります。そんなときのために、利用可能な資金調達の選択肢を知っておくことが重要です。ここでは、中小企業の経営者の皆さんが活用できる主な資金調達方法について解説します。
銀行融資
銀行融資は、中小企業にとって最も一般的な資金調達方法の一つです。以下のポイントを押さえて、効果的に活用しましょう。
1. 事業計画の準備:融資を受けるには、具体的な事業計画が必要です。資金使途や返済計画を明確にしましょう。
2. 決算書の整備:過去3期分の決算書を用意し、自社の財務状況を正確に把握しておきます。
3. 担保・保証人の検討:必要に応じて、担保や保証人の準備も考慮しましょう。
銀行との良好な関係構築が、スムーズな融資につながります。日頃から取引銀行とコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくことが大切です。
公的支援制度の活用
政府や地方自治体が提供する公的支援制度も、中小企業の強い味方となります。以下のような制度があります。
1. 日本政策金融公庫の融資:国が100%出資する政策金融機関で、中小企業向けの様々な融資制度を提供しています。
2. 信用保証協会の保証:民間金融機関からの借入に対して、信用保証協会が保証人となる制度です。
3. 補助金・助成金:特定の事業や設備投資に対して、返済不要の資金を提供する制度もあります。
公的支援制度は金利が低く、返済条件も柔軟な場合が多いため、積極的に活用を検討しましょう。ただし、申請手続きが複雑な場合もあるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
資金調達の方法は他にも、ファクタリングや私募債の発行、クラウドファンディングなど、様々な選択肢があります。自社の状況に最適な方法を選ぶことが重要です。
しかし、これらの資金調達方法の中から最適なものを選び、実際に調達を行うのは、経験のない経営者にとっては難しい課題かもしれません。そんなときは、専門家のアドバイスを受けることが賢明です。
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まとめ:健全な経営は適切な運転資金から
ここまで、運転資金の重要性から具体的な管理方法、そして困ったときの対処法まで見てきました。最後に、これらの内容を踏まえて、健全な経営のための運転資金管理について総括しましょう。
適切な運転資金管理は、企業の持続的成長と安定経営の要です。日々の業務に追われがちな中小企業の経営者の皆さんこそ、この点を意識して経営に当たることが重要です。
運転資金管理のポイントを改めて整理すると、以下のようになります。
1. 自社に必要な運転資金の把握
2. 日々のキャッシュフロー管理
3. 予実管理の徹底
4. 適切な資金調達方法の選択
5. 運転資金の確保と最適化の継続的な取り組み
これらの取り組みを通じて、突発的な資金不足を防ぎ、事業機会を逃さない強固な財務体質を築くことができます。そして、それが結果として、お客様や取引先、従業員との良好な関係維持にもつながるのです。
しかし、これらすべてを経営者一人で完璧に行うのは難しいかもしれません。特に、急成長期の企業や事業承継を控えた企業、あるいは業績不振から脱却を図る企業などでは、専門家のサポートを受けることで、より効果的な運転資金管理が可能になります。
運転資金の管理に不安を感じたり、新たな視点でのアドバイスが必要だと感じたりした場合は、ぜひ専門家に相談することをおすすめします。客観的な視点からの助言により、自社の財務状況を的確に把握し、より効果的な運転資金管理を実現できるでしょう。
最後に、運転資金管理は一度確立すれば終わりというものではありません。常に変化する経営環境に合わせて、継続的に見直し、改善していくことが大切です。健全な経営は適切な運転資金管理から始まります。この点を常に意識しながら、皆さんの事業がさらなる成長を遂げることを願っています。
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