100%免除の使い勝手の良い制度「事業承継税制改正」について
昨今の事業承継問題を考える時、私は一流のプロ野球選手が出演していたある番組の事を思い出しました。番組の構成は、確か関西の高校野球名門校出身のプロ選手が5名出演してその当時の事を語る内容であったかと記憶していますが、その番組の一場面で司会者が、出演している5名に
「ご子息を同じ高校に行かせたいか?」と
質問したところ全選手が「行かさない!」と回答するのです。初めはそんなものかなぁとその時は思いましたが、翌々聞いてみるとご自身が味わった厳しさをどうやら味合わせたくない気持ちがあったようです。
後継者不在が叫ばれる中、創業経営者の中には、経営の厳しさをわかっているだけにこのプロスポーツ選手同様なお考えの方もいらっしゃるのでは?と思うと複雑な思いになります。
今日は、既に平成30年1月以降実施されている「事業承継税制改正」についてお話をしたいと思います。
この制度の趣旨は、
「国内の中小企業が、次世代に対して事業の承継が円滑に行われる為に贈与税並びに相続税を最終的に100%免除する」
と言ったところでしょうか。平成29年以前に既に実施されていた事業承継税制と比較すると
①納税猶予対象株式
発行済株式2/3
↓
取得した全ての株式
②納税猶予額
対象株式に係る相続税80%(贈与税100%)
↓
対象株式係る相続税100%(贈与税についても100%)
③被承継人の要件
先代経営者のみに限定
↓
先代経営者以外からの承継も可能
④後継者人数の拡大
代表者は後継者1名
↓
後継者は最大3名まで拡大
⑤雇用確保の要件
贈与、相続時から5年間は8割を維持、確保が要件
↓
8割を下回った場合でも継続可能、但し都道府県に理由を記載の上、提出する義務
⑥株式の譲渡・合併・解散の場合の納税額
当初の納税猶予額を納付
↓
一定の要件を満たした場合に限り、当初の納税猶予額を上限とし、その時点で再計算した金額が当初納税額を下回った場合、差額は免除
となります。このように事業承継税制が改正になり、親族内の承継を促進するには使い勝手の良い制度と言えるでしょう。
しかし、これはあくまで平成39年12月までの10年間の特例措置であり、その適用を受けるには、平成30年4月から平成35年3月までの5年間の間に事業承継計画を各都道府県に提出する必要があります。
従って、今から少なくとも5年の間に、これまでの資産承継に偏った事業承継ではなく、如何に経営を承継させるかを検討し、その事業承継計画を如何に具現化していくかが先代社長、後継者にとって重要な使命となります。
弊社もこの特例措置を活用し、中小企業の支援策の一つとして取り組みたいと考えています。
執筆:沖原 厚則
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