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事業性評価って、結局何をどうするの

全国115銀行の不良債権残高は2016年3月期時点で8兆3800億円程との発表がありました。2002年には43兆円以上とされていたことを思うとこちらは随分と減ったものです。

 

一方先日、金融庁の試算によると
2025年3月期には、地銀の半数以上が赤字となっている」ことが発表されています。低金利(マイナス金利)の影響もあるとはいえ、貸出残高・利ざやの確保ができない限りは単なる時間の問題。経営が尻すぼみであることは間違いないでしょう。

 

銀行だって中小企業だって、日本の一部です。国家全体が、今後どのようにして衰退を免れるのか問われている以上、企業と同じように、銀行もこれまで同様、でやっていくことは困難だ、ということなのでしょう。事業性評価にしても、そんな危機感の中で生まれています。

 

ところで、事業性評価って、結局何をどうするのでしょう?

事業性評価のゆくえ

今後の中小企業評価の新たな軸となる事業性評価。端的に言えば、「これまでのような担保・保証人への依存から脱却し、ビジネスモデルと持続的な成長性に着目」して企業を評価しよう、という概念です。

 

これまでの金融検査マニュアルに基づく評価体系と異なり、各銀行が金融庁から独自性を認められる、いえむしろ独自性をもって融資を行うことを強力に求められている、という点で「これとこれだけ押さえておけば、絶対いける」とはとても言えないものになるでしょう。なにしろ、銀行ごとに異なる評価ポイント、指標を用いることになるためです。

 

しかし、ビジネスモデルと持続的な成長性、という観点から、また既に一部の銀行が公表している「事業性評価シート」からはどのようなポイントが評価されるのか、一定の傾向を見てとることができます。今回は、弊社が入手している複数の銀行の事業性評価シートや金融庁のこれまでの見解や直接取材の結果から、現在判明しているポイントをいくつか挙げておきます。

事業性評価のポイントは

業界動向の他、競合や地域経済状況からも、今後の成長性を計ろうとする

例えば、需要が半分になっても、競合が10分の1になれば残った企業は存続・成長が可能といえるわけです。

SWOT分析を使用して、状況把握と改善点の抽出を行おうとする

企業の経営改善、課題のポイントを提示したり、確認したり。企業側だけでなく、銀行側からも行うことを想定しています。実際にできるかどうかはともかく。

新規参入を受けたり、代替製品に切替されたりすることで商品・サービスのニーズが減少しないか確認しようとする

異業種からの参入や、技術革新などによる需要減少があり得るかということです。

企業の成長戦略の前提、基盤として、経営者の資質や理念・ビジョンが明記される

経営者そのものの評価は、ここしばらく有名無実化していましたが改めて明記されるようになっています。また、理念・ビジョンに焦点があたるようになっており企業としての存在理由や、行動規範・方針、事業目標設定・管理の運用状況もまた評価対象となります。

後継者の有無や、承継予定が明記される傾向が強い

企業の持続性を考えるならば、承継を考慮しないことはあり得ません。

企業のライフステージを判定され、格付けとは別の融資可否判断に利用される

企業の売上から、「成長期」「安定期」「衰退期」とライフステージを判定され、格付けと合わせて銀行の支援方針の決定に利用されます。

 

いかがでしょうか?どれも、企業経営を考えるにあたっては当然のものとも見えますがこれまでの融資判断に際しては使われてこなかったもの、もしくは形だけ、名ばかりだったりしたものです。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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