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銀行の求める財務数値と企業の目指す財務数値は矛盾する

財務指標と呼ばれる数値・率はたくさんあり、財務分析によって算出されて企業の安全性や収益性、その他の切り口から企業の状態が判定されていることは、説明するまでもありません。

 

有名なところでは、

 

「流動比率」「自己資本比率」「売上高対(各)利益率」等

 

少し変わったものだと

 

「ギアリング比率」「インタレスト・カバレッジ・レシオ」等々

 

時に、自社の基盤をより磐石なものにするため時に、より有利に融資を得るため企業経営者は財務数値を気にすることになります。が、銀行にとって望ましい財務指標と経営者にとって望ましい財務指標は一致しないことをご存知でしょうか?

キャッシュフロー経営と、銀行からの評価は矛盾する

キャッシュフロー経営、という言葉が使われるようになって久しいです。その名の通り、キャッシュフローが増えるように経営するという概念ですが、貸借対照表上では

 

現預金がより増えるように資産、特に固定資産は過剰には要らない

 

この有名な二点の他、「資産をできるだけ、表の上の項目に移していく」ことを重視します。

 

貸借対照表の資産項目は、一番上が現預金ですが、それ以外の項目にも表記される順番には明快な意図があり、現預金に近い、上の項目ほど流動性が高い、つまりはいつでも現預金にできるもの、になっています。

 

同じ流動資産でも売掛金のような、請求済みであとは入金を待つだけのものは、かなり現預金に近いものになりますし、棚卸資産は、これから売上・引渡しすることで売掛金→現預金となるため、より遠くなる、だから、売掛金よりも下に表記されているといったものです。

 

これは、キャッシュフロー経営というものが企業の経営判断をより柔軟に、機動的に動けるようにするべきという考え方に基づき資産はできるだけ動かしやすくする、固定しない=現預金(に近い)方が、動かし易いためです。

 

固定資産を過剰に持たないというのも、同じ理屈です。

 

しかし、銀行融資を得るためには、キャッシュフロー経営と反対の概念が要ります。融資は、元本の回収が前提ですが、銀行から見て回収の安全性を確保しようとするとより存在が確定する固定資産がたくさんある方が融資を行いやすくなります。最も分かり易い例は、最近は減ったとは言え、ある程度大きくなった企業に対して「本社の土地・建物を取得しましょう、融資しますから」というもの。

 

土地・建物を担保にして融資をしつつ、根抵当権にして他の融資に対する保全も確保するわけですね。キャッシュフロー経営と銀行評価の違いはいい・悪いではありません。そもそも目的が違うのです。

 

銀行の評価は、要するに

 

「貸したお金が安全に返ってくるか」の判断であって「企業の将来の理想像」ではない、ということです。

 

自社の理想像は、経営者自らにしか決められないもの。銀行にこう言われたから、というのは経営判断の一つの根拠にはなっても、それだけで決めてよいものではない、とお考え下さい。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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