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過払い請求を舞台にした、経営者の姿勢

今回お伝えする内容は、ある意味おかしな内容であることを先に申し上げたいと思います。また、書いてあることが、文字通り誰でもそうするべきものということではない、とも。

 

過払い請求と言えば、利息制限法と出資法、それぞれ別の金利上限があり、その差額部分となる「グレーゾーン金利」部分について、貸金業者に対して借り手が過去に遡って請求できる、というもの。

 

出資法の改正による金利上限の統一化や、時効の問題から近いうちに請求対象となる過去の融資が存在しなくなるとされており、電車やテレビなどでも「今なら無料で診断します、報酬は成果報酬で」などと謳った多くのCM・広告が流れています。

 

一時的にせよ、当時貸金業者からの融資を受けた方であれば請求する権利をもつ可能性があります、必要に応じて請求を検討するのは決して悪いことではありません。

 

個人事業主や小規模企業の経営者であれば、個人名義で融資を受けた方も何万人~何十万人といらっしゃることでしょう。

 

が、私が今までご面会してきた経営者の方で、「権利があるからやればよい、ということではない」という方がお二人ほどいらっしゃいました。

自分の在り方のために「請求しない」という人はいる

資金繰りのご相談を受けていると、今ある借金は確認するものですから借入内容を確認していくと、確かに過払い請求できるのでは?と見て取れるものがあるわけです。私としては当然、それをお伺いするのですが、このお二人は示し合わせたかのように同じ返答をされていました。

 

「過払い請求できるのは知っているけれど、やりたくありません」と。

 

理由を伺えば「私は借りるときに、借入金額や返済条件の他、金利についても自分の目で見て確認して、この金利でもいいと思って契約しています。後から法律が変わり、過払いと請求できる権利が生まれてもだからといって請求するわけにはいきません」

 

「コンサルタントの方にはおかしなことに見えるかもしれませんが私がこれから再生するにあたり、約束を必ず守ることを大事にしたいのです。かつての融資についても、自分で納得して契約した、約束の一部。だから、私のわがままかもしれませんが、過払い請求はしないことを前提に資金繰りを考える、ということでこの相談を進めて欲しいのです」

 

当時未熟だった私は、(もらえるものは、もらってもいいのでは?)と本当にこれでいいのか迷ったのですが、社長の気持ちを無駄にしない方がきっとよい、と考えキャッシュフローがプラスになることを確認した上で了解しました。

 

あとは結論のみを申し上げます、このお二人は、どちらも非の打ち所のない再生を遂げられています。展開も同じ。その後、約束を守る姿勢が評判を呼び、売上が大きく伸びて借入返済を正常化に持ち込んだのです。

経営者としての姿勢の徹底

私は、この事例をもって皆様に過払い請求をしてはならないといいたいわけではありません。権利を行使すること自体は、なんら問題があるはずないのです。

しかし、経営者として、それ以前に人としての姿勢を徹底することの重要さを教えていただいた、重要な案件でした。

 

自分自身がどうあるべきか決めたら、全ての行動に反映させていく「約束を守る」と言ったら本当に守るということ。そんな姿勢が奇跡的な売上向上を生んだことは間違いありません。

 

皆様は、経営者としてどのような姿勢をもつでしょうか。それを日常的に、あらゆる場面で実行できるでしょうか。

 

経営者というのは、つくづく人としてのあり方が問われるものだなあ、と今も折に触れて思い返しています。

 

私としては、コンサルタントとして、経営者の方がどんな決断をするにせよ、納得のいく決断をしていただけますように情報や環境を用意することを自分自身の姿勢として、今後ともまい進していきます。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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