銀行交渉で「誰に断られているのか」の確認が必要なケース
複数の銀行に同時の交渉を行う場合、ある一つの銀行が全くこちらの話を通してくれない、その結果、全体の交渉が滞ってしまう…、こんなご相談が増えつつあります。
一昨年前より、金融庁は「各金融機関が協調して企業に対応すること」を求める一方で、各金融機関の独自判断も認める発表をしており、「メイン銀行さんが認めても、うちは独自判断を行う」ということは、制度上はOKになっています。
特に複数の銀行からの協調融資を得ている企業や返済条件の変更(リスケジュール)をしていたりする企業が、このような対応をされてしまうとたまったものではありません。
が、私の経験上、半分以上は本来独自判断をされるべきものではなく、不幸な出来事で偶発的に発生してしまう、解決可能なものであることをお伝えしようと思います。
大半は、伝言ゲームのミスから発生する
複数の銀行に同時に依頼する、ということで、例として
- 一度提出している事業計画通りに対して達成率が低くなってしまったが、売上や利益が思うように上がっていないことには原因がある
- 対応として、協調融資を得たい、もしくはリスケジュールを行って対応したい
- かつて粉飾を行ってしまっているが、その開示は行っている
という企業があったとします。メイン銀行が了承してくれて、一安心しつつ他銀行に同条件での取扱いを依頼すると、断られてしまう…経営者としては非常に困った状態です。しかし「誰に断られているのか」はご確認下さい。多くの場合、融資担当者から次課長、支店長への情報伝達がおかしなことになっています。
担当者が経営者の意図を正確に伝えられていない
銀行担当者が上席に経営者の意図を正確に伝えられていないパターンは非常に多いです。
どうして計画通りにいかなかったのか、説明しても担当者が理解できないと、上席が一方的に「要するに、ダメな会社なのではないか?」と決めてしまって「計画もろくに守れない会社の言うことなど聞けない」となると、担当者は「意図を上手く伝えられなかった」と弁明し、再度説明根拠を揃えようとしないで「御社の言うことは受け入れられません」と結論だけをもってきてしまいます。
このパターンの面倒くさいところは、担当者自身は自分の伝え方が悪かったとは自覚していないため経営者にとっては「断られてしまった」という結果だけが残ってしまうことにあります。
案外とこのパターン多いです。が、解決できますし、防止できます。
謝絶される際には必ず担当者にどのような説明を行ったのかヒアリングし、意図が異なることを伝えて上席に直接話をしたい旨依頼することです。あくまでクレームではなく、こちらの意図を間違いなく伝えたいとして下さい。
防止策としては、依頼事項や報告事項は簡単でよいので、極力紙に書いて「必ず上席の方に読んでもらってください」とコメントしつつお渡しするといいでしょう。紙に書いてあれば、その内容は忘れようがないのですから。結果的には、担当者を救うことにもなります。伝え方を間違えないで済むのですから。
過去経緯で上席が否定的な見解をもっている
特に過去に粉飾開示などを行い、それ自体は納得してもらっても信頼関係としてはなくなってしまった、そんな企業はその後の依頼を邪険に扱われがちです。
粉飾をしていたことは誉められようがありませんが、そもそも粉飾を開示する、というのはこれからは真っ当に経営を行い、改善していくことの意思表示です。ならば、粉飾を行っていた時期と比べて損益は改善しているのが通常ですので、その改善成果を定期的に報告することで、上席の見た目を変えることができます。
私の経験上では、半年もあれば、本当に真っ当に経営する覚悟をもった改善をしていれば、充分に評価を変えることができるでしょう。
本部や審査部からの指示
他の銀行が了承する一方で、特定の銀行の本部が拒否をする場合には、必ず明快な理由があります。もちろん、この理由を知って、解決することが求められますので、率直に謝絶根拠を聞かなければなりません。
本来、銀行は顧客からの審査依頼を謝絶する際には担当者だけではなく、上席が行うことが基本です。(あまり守られてはいませんが)しかし、自社を守るためにこそ、上席の口から本部の指示内容、謝絶根拠は正確に聞きだして下さい。上記の流れで、「伝言ゲームが乱れて、変な結論になっている」こともありますので!
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