安易な経営改善計画書が会社を倒産させる
金融機関から融資を得るため、返済条件の変更・継続を依頼するため、などの理由で金融機関の指導によって中小企業が経営改善計画書をつくることも随分増えました。
時に社長自ら、若しくは税理士先生と共に場合によってはコンサルタントを使ってまでして作成される経営改善計画書が、本質的には倒産が約束される計画になっていることをご存知ですか?
売上増加は計画しても、資金計画がない
大半の経営改善計画は、含まれている損益計画において売上が毎年毎年5%~20%増加していく構成になっています。
国家として人口が減少していくこのご時勢で同業他社が激減する等の理由もなく売上を増やし続けられる計画なんて怪しいものだというのは、本当は経営者が一番分かっているはず。
また、本当にそれだけの売上増加が達成できたとして必要な運転・設備資金はどこから出てくるのでしょう?また、お金を借りるのでしょうか?
金融機関がお金を貸せない、といった時点で売上がどんなに上がっていようとも資金がショートする、そんな計画にわざわざハンコを押して金融機関に提出するのは、互いのためによくないです。
過剰な売上計画が基盤にあると、
- 売上が達成されると、運転資金がショートする
- 売上が達成されないと、利益が足りずに資金ショートする
ことで、どっちに転がっても資金ショートする、「倒産計画」が出来上がる、ということです。
金融機関の格付け評価を気にする必要はない
経営者の立場からは、分かってはいても中々難しいようです。というのも「売上を改善していけない計画では、金融機関からの評価が下がらないだろうか」「売上が上がらないと、利益も上がらないのでは」と考えてしまうから。しかし、どちらも誤りです。
- 金融機関の財務評価において売上は確かに重要な財務指標の一つですが、既に利益率は同等もしくはそれ以上に重要です。売上上げても利益が上がらないくらいなら売上を落としてでも利益(率)を上げる方が評価はむしろ向上します。
- 損益分岐分析等を用いると、一定以上の売上を上げることで利益が残るようになります。これ自体は何も間違いのないことですが、自社の持つ器を超える売上は利益を生みません。管理できない仕事になるからです。人手不足に悩みながら、売上を上げようとする企業がもっとも分かりやすい例です。売上が増えても、人件費の高騰で利益が生まれずさらに売上を上げると管理側のキャパオーバーで増員分の管理ができなくなる。これでは社員も会社も、幸せになれるはずがありません。
「今利益をだせない仕事だが、倍の量になれば利益になる」のはある程度以上の大きさを持つ企業の理屈であって中小企業の場合は「今やっているものが利益を出せているからより大きくすることを考えてもいい」なのです。
経営計画の作成には損益計画が欠かせませんが、売上を安易に増やすことなく、現預金を確保しながらしっかりとした利益を残していくことを念頭に置いて下されば、きっと本当に役に立つ計画になることでしょう。