銀行員は、なぜ堅苦しい?
銀行に対する最大の質問
銀行に関する経営相談で、最も多いもの。それは「どうして、銀行(員)はこんなにも堅苦しいことしか言わないの?」「貸した銀行にだって責任はあるだろう?」この二点です。
懸命に経営をされている中、心ない一方的な言い方をされてしまってはたまったものではありません。度を超える対応や要求には、抗議をするのも当然です。しかし、なぜ金融機関が時に経営者に厳しすぎることを言ってしまうのか、正しく知っておくべきでしょう。ポイントは、融資のもつビジネスモデルそのものであり、投資とは全く異なるビジネスモデルだということにあります。
借り手も、投資と融資を混同してはいけない
投資は、資金投下した対象が
・成功する
⇒莫大な配当金等を受け取ることができる
・失敗する
⇒元本も保証されず、最悪ゼロになる
投下資金が最終的にゼロ、紙くずになっても自己責任。その損失を他者が埋めて救済することはあり得ないのが投資の原則。その代わり、桁違いの金額になって返ってくるのが投資の持っている性質で、融資よりも分かりやすいものです。さて、融資は、というと…、
融資は、資金投下した対象が
・成功する
⇒金利以上のものは受け取らない
・失敗する
⇒金利は当然受け取る
⇒経営者に対して(元本を回収するために)厳しい要求をする
⇒最悪担保を処分、保証人に請求してでも元本を回収しようとする
これが、融資の持つ根本的なビジネスモデルです。貸す側の立場で言えば、年間数パーセントの金利を受け取るだけで(借りる側にとっては「だけ」では済まないとしても)上手くいかなければ貸倒れてしまうというのは、あまりにもリターンに対するリスクが大きすぎ、ビジネスモデルとして成立できません。このポイントは融資というビジネスモデルにとって根幹の部分で、変えることは不可能です。
借りる側も、融資とは元々このような性格であることは、理解しなくてはなりません。金融機関も、貸すときにはお互いに気分よくありたいため、都合の悪いことはなかなか説明をしにくいのでしょうけれど…。
確度99%で、やっと利益ゼロ?
また、融資については、概ね「1年間で貸し倒れになる確率1%以内」で、ようやく収支がトントンになります。金利以外に自らの経費がかかってしまうため、です。借り手は勝負どころならば51%の勝算があれば挑戦したくなるものですが、銀行としては99%以上の確信があって、やっと取組みできるもの。ここに借り手からみて「堅苦しい」と思わざるを得ないギャップがあります。
債務者だって、胸を張って
融資担当者の心ない一言から感情論となり、関係が悪化してしまう事例というのは、今も昔も減っていません。ただ、経営者はいちいち不愉快に感じる必要はないのです。考えている基準が違うのですから。
あくまでも、企業の発展や再生の姿を見せることで、見直ししてもらうことが、最も健康的です。企業がなくなってしまえば、銀行だって存在できないのですから。
どうしても納得がいかない状況になっているとお考えの企業経営者様は、それこそ専門家やコンサルタントに相談をするべきでしょう。どこかに必ず、互いの認識の違いがあるのですから、認識の違いを埋めていくことが、何より銀行ともっとも良いつきあい方をするきっかけになります。