回転日数で資金繰りを考える
飲食業では今日は何回転したか?などでよく回転という言葉が使われる事が多いが、決算書の中での回転率を意識する方は意外と少ない。
決算書の中では
- 売上債権回転率
- 仕入債務回転率
- 棚卸資産回転率(在庫回転率)
- 総資産回転率
よく見る財務分析の効率性の指標だけでもこれだけある。しかしながらこの回転率と言うのが1.2回転だから何なのか?4回転だから何なのか?いまいち私はしっくりこない。だから私は資金繰りの厳しい再生現場においては全て回転日数に置き換えている。
- 売上債権回転日数
- 仕入債務回転日数
- 棚卸資産回転日数(在庫回転日数)
- 総資産回転日数
公式は至ってシンプル回転率を計算して365を割ればよい。
- 売上債権回転日数=365÷売上債権回転率
- 仕入債務回転日数=365÷仕入債務回転率
- 棚卸資産回転日数=365÷棚卸資産回転率
- 総資産回転日数 =365÷総資産回転率
例えば棚卸資産回転率が4.5回転で売掛債権回転率が6回転だとすれば
棚卸資産回転日数は
365÷4.5=82日(端数切上)
売上債権回転日数は
365÷6=61日
という事になり、この会社は82日分の在庫があり、売上債権で61日分残っている事になる。しかしながら私は在庫でお金が82日分寝て、売上債権で61日寝てしまっているとみている。他の項目でも同様!何日でお金に変わるのかを重点的に見る事にしている。
基本的な商品の流れは
発注→納品→在庫→受注→販売(納品)
である。勘定科目で言えば
商品(製品)→売掛金→受取手形(ない会社もありますが)→現預金
である。これを先程の回転日数に当てはめれば
82日→61日→現預金
となり。
商品が納品されてから現預金化されるまで143日かかってしまっているビジネスモデルという事だ。これでは売上拡大に走る際、資金繰り都合をしっかり金融機関とつけてからでないと、資金繰り破綻にまっしぐらになってしまう。
また先程の商品の流れの中で、資金の流れはもう一種類あり、商品を仕入れた際、仕入代金を支払わなければならない。
勘定科目で言えば
買掛金→支払手形(ない会社も多数あります)→現預金(減少)
となります。
先程の会社の仕入債務回転日数が50日だとすれば、商品を売った代金は143日後に資金化になりますが、仕入れた商品は50日後に支払いとなり、
143日-50日=93日
の立替資金が無ければ、この会社は資金繰り破綻でTHE ENDです。
先程の93日という数値は企業のキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)といわれるものであり、資金繰り管理においては有用であり重要です。
この数値を縮小させる事で、企業の資金繰りは借入や利益に頼る事無く改善させる事が出来ます。1日短縮できれば、1日分の立替資金が現預金として入ってきます。そこで利益が出ているのであれば、より多くの資金繰り改善を見込む事が出来るのです。
今回は決算書を例にして挙げましたが、このCCCは毎月計測してください。また部門別・事業部別に試算表を取られているのであれば尚良いですね。
CCCを把握したら、各日数指標を取引先毎、商品毎などに細分化してください。そうする事でどこがCCC短縮へのボトルネックになっているか、見えてくるでしょう。私はCCCで稼ぎ出した資金を自己金融(自ら調達した資金と言う意味)と呼んでいます。区別する意味で金融機関からの借入は他己金融です。是非、みなさまには本内容が資金繰り改善の糸口になれば幸いです。
執筆:奥田雄二