金融検査の重点は、融資のリスクから経営指導へ
最近は銀行が、企業の経営の細部に口出しすることが多くなってきています。これは、中小企業の再生のために国が施策を行っている結果です。
金融庁による銀行への検査(金融検査)は、従来では、融資先の与信リスク、つまり貸倒れリスクについて、各銀行が行っている自己査定に基づき正しく査定されているか、そして自己査定による資産分類によって貸倒引当金が正しく積み上げられているか、見られていました。
つまり、ある企業の債務者区分が破綻懸念先であれば、その区分は適切なのかどうか、そしてその企業に対して無担保で1億円の融資残高があれば、それに対し貸倒引当金が適正に積んであるか、金融検査により金融庁は銀行を見ていたのです。その銀行における破綻懸念先への融資の貸倒引当金が70%であれば、1億円に対し7000万円の貸倒引当金が積んであるか、ということです。
しかし、一部銀行を除いて不良債権問題が片付いたこと、各銀行が貸倒引当金を十分に積んでいることから、現在の金融検査では、次の段階として、銀行が企業に対し、経営指導を行っているかどうかに重点が移っています。また、銀行が企業の経営や財務状況、収支・損益状況、将来性などを適切に審査し、積極的な融資ができているかを見ております。
最近、銀行が経営改善計画を一緒に作ろうと言ってきて作った、毎月予算実績の管理を銀行と行うようになった、税理士やコンサルタントなどの専門家の紹介を受けた、ということはありませんか。それが、この流れなのです。
銀行が企業に経営改善計画書の作成を指導すること、そして改善計画を実行するために経営指導を行うこと。それが企業の業績向上に結びつき、利益が上がって現金が多く入るようになれば、リスケジュール、つまり毎月の返済の減額・猶予を行っていた融資の返済再開に結びつくのです。
経営者の中には、経営指導を行おうとする銀行の動きを警戒する人もいます。経営者の方と私たちコンサルタントがご一緒する時、銀行員がいる時といない時では、話す内容が全然違う社長もいます。
そりゃそうです。銀行員は何をねらっているか分かりません。一言一言、銀行員の前で話すことに慎重になってしまう気持ちは分かります。
しかし銀行は経営指導を行おうとしています。いろいろなことを素直に打ち明けてくれない社長であれば、銀行は「この社長、まだまだ隠し事があるな」と思うことでしょう。そして信頼関係はいつまでたっても構築されないことでしょう。
ただ銀行は、企業の業績が良くなってくれることが一番良いのです。業績が良くなって返済を再開してくれた方が、銀行は多く回収できるようになるのですから。
銀行から「この会社は経営改善計画を実行して経営改善が進み、良くなってきている。」と思ってもらえる企業になれば、銀行もむちゃなことはやってきません。
最近、銀行が自分の会社の経営に細かく口出ししたがっている、という現象がある企業であれば、その背景はここで述べたことですので、銀行を深く警戒する必要はないでしょう。
そして厳しい業況の中でも、銀行からの経営指導を受け入れてコミュニケーションをとる中で、企業と銀行との信頼関係ができ、経営者が本気になって自分の会社の経営を改善していくことができれば、企業の将来は明るいのではないでしょうか。
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