経営者保証ガイドラインを知っていますか
経営者保証に関するガイドラインが2014年2月1日にスタートしました。経済産業省によると、このガイドラインは、経営者の個人保証について、
- 法人と個人の資産・負債が明確に分離されている場合などで、経営者の個人保証を求めないこと。
- 多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等を残すことや、華美でない自宅に住み続けられることなどを検討すること
- 保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期の事業再生を応援する趣旨となっております。この10年で、連帯保証人問題は大きく改善されました。
2005年に包括根保証、つまり限度額の定めがない保証契約は禁止されました。2006年には信用保証協会における第三者保証人徴求が原則禁止され、2011年には信用保証協会保証付でないプロパー融資でも、銀行が企業へ融資する際、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とされました。
そして2014年、経営者保証ガイドラインがスタートしました。
今までは、中小企業が融資を受けるにあたって、経営者はほとんどの場合、連帯保証人とならなければなりませんでした。その理由としては、第一に経営者への規律付けがあります。
企業から経営者個人に資産を移し、一方で企業を倒産させて銀行への返済ができなくなっても、経営者個人が豊富な資産を抱えたままというのは大きな問題であり、経営者も保証人となることが要求されます。
また、経営者はいくらかの資産があれば、保証人として企業の信用力の補完になります。そして、中小企業にありがちな粉飾決算の問題。粉飾決算で融資を受ける企業はとても多く、経営者を保証人とすることにより、銀行は経営者に、決算書の信頼性に責任を持たせてきました。
それがこのガイドラインにより、今後は、経営者が保証人とならない融資が拡充されたり、既存の融資で経営者の連帯保証を外せる可能性が出てきたりします。 このガイドラインの構成は、大きく2つに分かれます。
一つは保証契約においてのガイドライン、もう一つは保証債務を整理する時の手続きについてです。
保証契約においてのガイドライン
経営者が保証人とならずに融資を受けるには、次のことが求められることになります。
・法人と経営者の資産・負債を明確に区分、分離させる。
・企業の返済能力の向上により信用力が強化されている。
・銀行には、決算書等、粉飾ではなく信頼性の高い情報を開示する。
これらの要件を満たし、銀行に交渉することにより、今後は経営者の保証なしで融資を受けることが期待されます。また既存の融資で経営者が保証人で入っている場合でも、これらの要件を満たして銀行に交渉することにより、経営者の保証を外すことができるかもしれません。
なお事業承継時において、前経営者の既存融資での保証を後継者へ引き継ぐかどうかにおいても今後は当ガイドラインをもとに、銀行と交渉していくことができるようになるでしょう。
前経営者に保証契約が残るかどうかも同じです。
保証債務の整理手続き
この整理手続きでは、保証債務を追っている保証人(経営者とは限らない)が、保証している企業の債務整理を行うにあたって、保証人としての保証債務をどう整理していくかがガイドラインとして定められています。
この整理手続きは、中小企業再生支援協議会などを活用していくことになります。
保証人には、どれだけ資産を残すのか(残存資産)。
事業を継続するのであれば安定した事業継続のためにどれだけ資産を残すか、事業を清算するのであれば一定期間の生計費や華美でない自宅などの資産を残すかどうか、が検討されます。
今後の、経営者保証の環境は、大きく改善していくことが期待されます。
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