コミュニケーション不足という言い訳は上司の責任
会議でコミュニケーション不足、という言い訳が出てくることがあります。口にする方にとっては「私も悪いかもしれないが、相手も悪い」というニュアンスで使われていることと思いますが、ピーター・ドラッガーによれば、かならずマネージャー(上司)に責任があり、上司が自ら言った場合は、例え自覚がなくとも、その上司自身が悪いことを認めている、とされることをご存じでしょうか?
「コミュニケーション」という言葉の意味
もっと話合いをしなければ…
もっと部下と会話をしなければ…
もっと正確な報告をするためには…
コミュニケーションをとろうとした時、実際に人が思うのはこういったもの。口頭の相談であれ、書類での提案や報告であれ、何らかの対話がなければコミュニケーションは成立しません。ただ、先に一つ認識しておくべきことがあります。それは、
コミュニケーションの元々の意味は、”共有”である
ということ。古くはラテン語にさかのぼり、コミュニス(communis)すなわち共通したもの、あるいは共有物(common コモン)と言われています。現代日本語で一言で表すと、「共有」となります。しかし、コミュニケーション不足と表現される裏側で発生していることは
「確かに言ったはずだ」
「いや、聞いていない」
「あの時こう決まっていたでしょう?」
「いや、そうは解釈していない」
という押し問答ばかり。ほぼ、片側は「伝えたつもり」になっていて、もう片側は
・聞いたが、誤解した
・そもそも聞いていない(と思っている)
・聞いて、賛成ではないが、あえて反対を表明していないだけ。賛成ではないので、従っていない
と反論する、と言う構図です。
企業経営においては、より上層部の責任になる
では、コミュニケーション不足が問題になった時、「伝える側」「聞く側」どちらが悪いのかと言うと、「伝える側」に問題があると言わざるをえません。というのも、
- そもそも、「聞く側」は、言われない限り、その対話の必要性にも、存在にも気がつかないから
- 企業において、意思伝達はおおむね上(経営者・マネージャー)から中間管理層を経て下(担当者)へ流れていくものだから
コミュニケーションは共有することとは言え、双方同時に発生するというよりは、片方がもう片方に、共有を持ちかけることから生まれるものです。企業においては、依頼・要請・指示・命令等の形をとって上の立場が下の立場へ「持ちかける」側になります。
が、下の立場は基本的に「言われない限りは、その共有するべき内容を知らない」。だから、管理者にとっては痛い話になりますが、コミュニケーション不足というのは「上の立場=伝える側」に、その責任があるのが本質です。
なのに、とある部長が会議で「うちの部はコミュニケーション不足で…」というのを、自分だけが悪いわけではないように言ってしまう。これを社長が受け入れてしまっているうちは、「不足」が解決できるはずもないのです。
部長自身が、共有できるところまで伝えていない、社長自身が、それに気づいていないということなのですから。
営業部門ではさらに問題になる
社内だけで完結できない、顧客とのやりとりを行う営業部門ではこの問題はより深刻です。共有情報に、社外の存在である顧客が含まれてくるのですから。この点が、営業部門が伸びてこないと悩む企業の大半が抱えている問題です。
どんなに優秀なツールや仕組みを導入しても、「なぜ」「なに」が共有されていないならば、機能することもないのです。コミュニケーションの機能を、考えることが何より企業の改善には不可欠です。