銀行のつきあいのよい会社にならないようにする
経営者の中には、お人よしのタイプがいます。銀行は、お人よしの社長にはいろいろなことを頼もうとします。
銀行は企業に対し、優越的地位の濫用と言って、「貸し手」としての優越的地位を濫用して、企業に無理やり取引をさせることはいけないことになっていますが、お人よしの社長はそんなこと関係なしに、銀行から頼まれることに何でも応じてしまう傾向にあります。
銀行がお人よしの経営者に頼むことは、次のとおりです。
- 融資を受けてほしい
- 金利を引き上げてほしい
- 担保を追加で入れてほしい
- 預金を定期にしてほしい
- 銀行の商品・サービスを買ってほしい
- 銀行の関連会社と取引してほしい
- 別の銀行とつきあわないでほしい
など。こう見ると、銀行は企業に、いろいろなことを頼もうとするものですね。では一つ一つ、見てみましょう。
融資を受けてほしい
銀行の各支店は、大きな営業目標を本部から課せられます。それは4月~9月、10月~3月と半期ごとに目標数字が課せられるのですが、その一つに融資残高の増加があります。
銀行は債務者区分が正常先の企業に対し、融資を受けてほしいと言ってくるのは、この目標を達成するためです。
しかし企業側は、融資を受けると当然、利息を支払わなければなりません。融資を受けてほしい、と言われ、必要ならまだしも必要でない融資まで受ける必要はありません。
「融資を多く受けると、借入金が膨らみ財務内容が悪くなる。」と言って断りましょう。しかし金利を大きく下げて提案してくれる、ということでしたら、その金利が今後の融資の金利水準となるため、融資を受けてもよいでしょう。
金利を引き上げてほしい
最近は銀行間での融資競争が激しく、金利は低下傾向にあります。しかし一方で、債務者区分が正常先でない、要注意先以下の企業は、一定の貸倒引当金を銀行は積まなければならないため、その見合いとして少しでも高く金利を引き上げようと要求してきます。
しかし変動金利で自動的に引き上げることになっているのでないかぎり、銀行からの金利引上げの要求を受け入れなければ、金利は引き上げられません。
「金利を引き上げるぐらいなら、その分を銀行への返済にあてたい。」と言って断りましょう。
担保を追加で入れてほしい
まだ担保に入れていなかったり、担保価値がまだ残っていたりする不動産があれば、それを追加で銀行に担保に入れるよう要求してきます。
しかしその要求を受け入れる必要はありません。
その不動産は、今後新たに融資を受ける時にあたって、担保がなければ融資は絶対に出ない時にこそ活用すべきであり、既存の融資の追加担保として入れるべきものではありません。
「今後新たに融資を受ける時に担保は使いたい」と言って断りましょう。
また定期預金を担保にすることも同じです。定期預金を担保に入れて融資を受けるのなら、その定期預金を解約して使うべきです。定期預金の担保は、自分の預金を自分で借りて利息を払うことと同じであり、やるべきではありません。
「自分の預金を自分で借りて利息を払うことと同じであり意味があることと思えない。」と言って断りましょう。
預金を定期にしてほしい
融資を受けている銀行では、預金を定期預金にしたら、その後、引出しの時に銀行から抵抗に合うものです。定期預金は作るべきではありません。
「今後の運転資金として使いたいから。」と言って断りましょう。
銀行の商品・サービスを買ってほしい
投資信託、保険、クレジットカードなど、融資以外にも銀行は、たくさんの商品・サービスがあります。
銀行から勧められるものは、たいてい必要のないものでしょう。また、投資信託やデリバティブなど、損失が出るリスクがあるのもあります。
もし損失が出た時に「銀行から勧められたから買った。損失を補てんしてほしい。」と銀行に訴えても、応じてもらえないでしょう。
自社が必要な商品やサービスならともかく、銀行の勧められるままに、銀行の商品やサービスを買わないようにしてください。
「費用がかかるなら、その分を少しでも銀行への返済にあてたい。」「リスクが高いからやりたくない。」などと言って断りましょう。
銀行の関連会社と取引してほしい
リース会社、不動産会社など、銀行は多くの関連会社を持っているものです。そしてそこには、銀行から多くの社員を出向させています。
その関連会社とつきあうメリットがあるならまだしも、メリットがないのなら無理につきあう必要はありません。
「他に良さそうな会社があるので、そことの比較で少しでも経費を抑え、それで浮いた分を少しでも銀行への返済にあてたい。」と言って断りましょう。
別の銀行とつきあわないでほしい
銀行の中には、自分のところとだけ取引してほしく、別の銀行とはつきあわないでほしい、と言ってくるところもあるでしょう。
しかし企業の業績が悪くなった時に、その銀行は融資を行うことによって自社の資金繰りを支えてくれるのかどうか、銀行に保証してもらうことはできないですよね。
また他の銀行と融資競争させないことによって、金利の水準は高止まりになりがちとなります。
企業はつきあう銀行の数を増やしていくべきです。「おたくから万が一融資が出なくなった時に備え、つきあう銀行の数を今のうちに増やしておきたい。」と言っておきましょう。
以上、銀行は企業にどのようなことを要求してくるのか、そして企業はその要求を受けた時にどのように考えたらよいのかを述べました。私が銀行員時代、得意先係として多くの目標数字を課せられていましたが、その目標達成のためにまず目を付けるのは、
「あの社長に頼めば、やってくれるだろう。」とすぐに頭に思い浮かぶ経営者でした。
銀行の要求は、なんでも受け入れる必要はありません。また優越的地位の濫用として、銀行は「貸し手」として企業に無理やり取引をさせることはいけないことになっているので、断ることにおそれる必要はありません。
なんでも要求を受け入れてくれる社長に、銀行員は頼みごとを集中させるものです。銀行にそう思われてしまうと、後々、大変なことになるでしょう。
またそのような社長は、銀行に限らず、他の取引先に対してもいい人、そして自社の社員に対してもいい人でいようとするため、経費が多くかさむことになり、赤字経営に陥ってしまうことにもなりかねません。
つきあいのよい会社にならないようにしてください。
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