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純資産が最も重要な指標になった

債務償還年数については、これまで10年以内であることが評価基準となってきたのが、20年(以上)にまで緩和されました。

 

一方、こちらの純資産に関する指標は、大きな緩和はされずむしろ債務償還年数に代わり最も重要な指標になりつつあります。確認をしておきましょう。

純資産の評価指標

貸借対照表の右下に記載される純資産を評価するにあたっては純資産総額がプラスか、マイナスかで使用する指標が変わります。

1.純資産総額がプラスの場合=自己資本比率

自己資本比率 = (純資産総額 / 総資産額)%

 

純資産がプラスであれば、財務指標の中でも最も有名なものの一つである自己資本比率によって評価されます。20%以上であれば優良との評価を得ることに繋がるのが一般的です。

 

これまでであれば、真にこれだけで十分だったのですが自己資本比率が優良であるほど逆に気をつけなくてはならないことも着目されるようになりました。

 

それは、「自社株評価」。承継・相続まで想定した場合、純資産が優良であるとそれだけ税額も増えていくことが予想されるため経営・承継、という意味においては逆に足かせになることが心配されています。

 

資本金があまり大きくない企業であれば毎年少しずつ株式を譲渡(非課税)する等の方法もv ありますが、会社の所有権である株式なだけに、承継の問題として税と法、経営を総合的に考えることが必要です。

 

もちろん、むやみに純資産評価を下げれば財務評価が落ちることにもつながるため、対応シナリオとともに「無事に承継を果たすためであり、実質的には財務的に悪化するものではない」旨を説明することで、無用に過小評価を受けることを避けるべきでしょう。

2.純資産総額がマイナスの場合=債務超過解消年数

債務超過解消年数 = (債務超過額 / 当期利益)年

 

純資産がマイナス、つまり債務超過の会社の場合には、現在の利益水準で債務超過を解消し、純資産がプラスに変わるのに何年かかるのか、が優良の評価は得られずとも、金融機関の協力を得られるかどうかの基準となります。

 

かつては5年だった基準は10年にまで延長可能ですが、それ以上の緩和は現在も認められないことが大半で10年以上かかると想定される場合には「事業収益だけで債務超過の解消は困難」との解釈から

 

  • 遊休不動産等を売却して負債(借入)を圧縮する
  • 保険等を使用して、最終的には債務超過を解消できる
  • 後継者を確定させる
  •  

等、財務・経営上の施策を含めた対応で金融機関の協力を得ることを検討することになります。

 

保険については、コンプライアンス上の問題を含めて慎重に考えなくてはなりませんが、むやみに解約をしても、将来のキャッシュインを大きく削ることになるので、資金繰りが厳しいからといって安易に解約することは、企業だけではなく、金融機関にとってもリスクであることを考えるべきでしょう。

 

実際、私の取組みでも、あえて保険を増額(コストは増え、利益は減る)させることを金融機関に説明し、了解をいただくことは当たり前に可能です。

 

後継者については、例え債務超過であっても「将来的に資金繰りを改善し、会社を存続させる意思がある」

⇒現在の経営者が逝去した際に、相続放棄によって金融機関に貸倒れをさせるつもりがない

 

意思の表明となることで、債務超過の早期解消がつかないことへの対応策となります。指標は基準として大事なものですが、あくまで会社の存続性を改善すること自体が金融機関の評価や協力につながるとお考え下さい。

この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行、6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱い。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社へ入社。約10年間で対応してきた相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。セミナー講演回数も数十回と、コンサル活動の傍ら現場で必死に対応する企業経営者の叫びを直接伺ってきた者として今日もどこにでも伺います!

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