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銀行から一括返済してほしいと言われた場合

銀行から、一部の融資の一括返済をしてほしいと言われた場合。企業側としては、なんとか一括返済を防ぐべく、理論武装をしておきたいところです。一括返済は、特に次の融資方法で求められます。

 

  1. ころがし手形貸付 ころがし手形貸付とは、1年以内の返済期限で、途中返済がなく、期限が来たら同額で借換え(ころがし)する手形貸付、のことを言います。
  2. 専用当座貸越 極度額を決めて、その範囲内であったらいつでも、借りたり返したりできる融資方法を言います。なお、当座預金と連動し、極度額までは当座預金をマイナスにできる一般当座貸越という融資方法もあります。

 

これらの融資は、企業側としては、期限が来ても銀行が更新してくれる前提でいるものです。

 

通常時であれば、期限が来ても銀行は更新してくれて、一括返済は求められないものですが、問題は企業の業績が悪化した時です。ころがし手形貸付は、1年以内の返済期限で、その期限に同額のころがし手形貸付を受けることによって、企業は実質返済せずに融資を受け続けることができます。

 

専用当座貸越は極度額を決め、1年~2年の期限を決めて、その間であればその極度額の範囲内で借りたり返したりできます。例えば銀行が、当座貸越3,000万円の極度額を設定してくれれば、その範囲内で借りたり返したりできるのです。

 

しかし企業の業績が悪化した場合、ころがし手形貸付の場合は更新してくれずに返済期限に一括で返済をしてくれ、と銀行は言ってくることがあります。当座貸越の場合は、極度の更新をしてくれずに、その時点で当座貸越で受けている融資を全額一括で返済してくれ、と銀行は言ってくることがあります。

 

なお、長い期間の毎月分割返済の融資の融資では、銀行はその融資を一括返済してほしいと言ってくることはほとんどありません。

 

その場合、企業には「期限の利益」があります。期限の利益とは、毎月分割返済していれば、一括返済は求められない、という企業側の利益のことです。企業が銀行と交わす金銭消費貸借契約書には、毎月○日に○円ずつ返済する、ということが書いてあります。これが期限の利益の根拠です。

 

万が一、毎月分割返済の融資において銀行が一括返済をしてほしいと言ってくることがあれば、期限の利益を主張すればよいわけです。ただし、企業が融資を受ける時に銀行と交わす金銭消費貸借契約書にて、期限の利益の喪失条項があり、それにあてはまれば期限の利益が喪失し、一括返済を求められるので注意してください。

 

またもともと一括返済が条件である融資、例えば○月○日に入ってくる売掛金で一括返済する約束を銀行と交わしている融資は、当然、一括返済しなければならず、このような融資はそもそも一括返済をしないことが、銀行との約定違反となります。

 

ではなぜ銀行は、企業が更新を前提と考えている、ころがし手形貸付もしくは専用当座貸越にて、一括返済をしてほしいと言ってくるのでしょうか。

 

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銀行が融資の一括返済を求めるわけ

それは、企業の業績が悪化すると企業の債務者区分が下がり、銀行は貸倒引当金を積まなければならないからです。債務者区分とは、銀行が融資をしている全ての企業に対し付けている区分です。正常先、要注意先(その他要注意先、要管理先)、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先があります。

 

ころがし手形貸付や専用当座貸越という融資方法で銀行が融資をしてくれる企業はほとんどの場合、正常先です。

 

正常先の企業にも銀行は貸倒引当金を積まなければなりませんが、それは銀行によって率は異なりますが、0.1%~0.5%です。なおこの率は、その融資が担保や信用保証協会保証などの保全がないものとしての率を言うこととします。

 

それが、その企業がその他要注意先になると、3~8%の貸倒引当金となります。要管理先となると15~30%、破綻懸念先となると50~80%ともなります。

 

つまり、ある企業に対してころがし手形貸付を3,000万円、担保も信用保証協会保証もなく融資をしている場合、その企業が正常先で貸倒引当金が0.3%とすれば3,000万円×0.3%=9万円ですが、その他要注意先となって貸倒引当金が5%となると3,000万円×5%=150万円、破綻懸念先となって貸倒引当金が70%ともなると2,100万円ともなるのです。

 

貸倒引当金を銀行が積むということは、銀行自体の財務内容がそれだけ悪化する、ということになります。

 

企業の業績が悪化したら、債務者区分は悪くなり、銀行は貸倒引当金を多く積まなければならなくなります。だから銀行は、企業の業績が悪化したら、融資を一括返済してほしい、と言ってくるのです。

銀行が貸倒引当金を少なく積めばよい場合

ころがし手形貸付や専用当座貸越は、大きい金額の融資となっているものです。銀行から一括返済を求められたからと、手元の現金預金から支払ってしまえば、その後の企業の資金繰りに大きい支障が出ますし、そもそも一括返済は困難な企業が多いでしょう。

 

では銀行が一括返済を求めてきた場合、どうすればよいでしょうか。

その融資に保全がないかを見てみる

担保や信用保証協会などの保全があると、その分、銀行は貸倒引当金は少なくてもよいはずです。

そのような保全状況を、見てみます。そして保全があるのであれば、銀行に「銀行に不動産を担保として出しています。それで、ころがし手形貸付は保全できているでしょうから、一括返済は勘弁してもらえますか。」と交渉します。

経営改善計画書を書いて銀行に提出する

銀行は、今時点で債務者区分が下がったというだけでなく、将来に債務者区分が下がるおそれがある、という理由でも一括返済を企業に求めてくることがあります。ではなぜ将来、債務者区分が下がると銀行は思うのか。それは、その企業の将来像が見えないからです。

 

銀行に将来像、つまりどのようにして企業は業績を回復させていくかを見せるには、経営改善計画書を書くことが必要です。また一定の要件に沿った経営改善計画書であれば、それをもとに債務者区分を銀行は引き上げてくれることがあります。

 

「経営改善計画書を1ヶ月以内に銀行に提出し、将来、どのようにして業績を回復させていくかを示しますから、一括返済は待ってもらえますか。」と交渉します。

メイン銀行で正常なる運転資金であることをアピールする

高度な話になりますが、正常なる運転資金としてみなされる融資は、正常先、その他要注意先、要管理先の場合、正常債権として貸倒引当金は少額で済む、というルールがあります。

 

正常なる運転資金とは、下記で計算される運転資金です。なお不良資産、例えば返ってくる見込みのない売掛金や、在庫として存在しない棚卸資産などはここでの計算から省きます。

 

(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)

 

これは、企業が商売上、立て替えているお金、ということになります。それは正常なる運転資金として、メイン銀行がころがし手形貸付や専用当座貸越の形で融資を出していることが多いものです。

 

そしてこの金額は、商売をやめた時は0になるものですから、いずれ企業から銀行に返済されるお金として、正常先、その他要注意先、要管理先では、正常債権として貸倒引当金は少なくて済みます。業績が悪くその他要注意先や要管理先となっても、そこを主張し、一括返済を待ってもらうように銀行にアピールします。

 

【関連記事】適切な運転資金は何か月分?運転資金の目安と資金確保の手段を紹介!

それでもだめなら分割返済を

しかし、このような手段でも銀行は言うことを聞いてくれず一括返済を求めてくる場合。

 

一括返済は企業は困難なのですから、分割返済の交渉をしていくようにします。ただし、例えば1,000万円の融資を1年で返すことになれば、月83万円の返済ともなりますから、毎月3万円というように、企業の資金繰りを考えてできるだけ抑えた金額の返済でよいように銀行と交渉していきます。

 

このように、ころがし手形貸付や専用当座貸越で、銀行から一括返済を求められた時でも、慌てずに、銀行と交渉する方法を考えてみてください。

 

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