早すぎることはない事業承継の準備
先日、弊社社員向けの勉強会がありました。 (以前より交流のあった税理士事務所にお願いしました)テーマは、事業承継税制・自社株対策・相続税改正、等で、やっていただきました。
経営者層の平均年齢が60歳を超えていると言われています。そうしたなかで、ここ5年から10年で相当数の企業が、何らかの形で事業承継をおこなっていくことになるかと思います。(御社や御社の周りの企業でも該当するのではないでしょうか?)
優良企業であっても、普通な企業であっても、どんな企業であっても、中小企業においては、事業承継というのは避けることはできない重要課題です。勉強会を通して、再確認したこと、新たに学んだことを共有させていただきたいと思います。
後継者を想定しているか?
理想は、ご子息やご令嬢といったご親族が会社を継ぐことであるが、それが適わないときは、社員登用や会社の譲渡(自社株の譲渡)、場合によっては廃業。廃業を選択せざる負えない場合は、時期や何らかの金額基準を設けます。
自社株・事業用資産の集約をおこなう
業歴の長い企業にありがちですが、株式が分散していることが多々あります。経営に関与していない親族が所有していたり、取引先が所有していたり、いろいろな形が見受けられますが、事業を後継者に委ねるのであれば、後継者に株式が集中するように計画を立ててください。まずは、現状の把握から。
また、個人の土地の上に、会社の工場を建設したりしている場合もあると思います。底地の所有者が後継者となれば問題はありませんが、他者となってしまう場合は、事業継続に影響が出ることも想定されます。後継者個人が買い取るのか、会社で買い取るのか、検討が必要です。
自社株等の評価をおこなう
分散している株式を購入により集約していくにせよ、贈与するにせよ、相続させることを検討するにせよ、金銭評価が必要です。
買取するためにはいくら資金が必要か、贈与する場合は、受贈側の納税額はいくらになるか、相続での移動を検討する場合は、現経営者のすべてのプラスの財産・マイナスの財産の相続税評価をおこない、相続する側が必要な納税資金はいくらになるか、といったことを把握しおきます。
相続や贈与するにせよ、株式譲渡するにせよ、金額での評価をおこない、金銭があるか、足りなければどうやって準備するか、を現経営者で検討します(場合によっては後継者を交えて協議)。不動産等の事業用資産も、自社株と同様に金銭評価します。
法律・税金制度を勉強し円滑な相続に備える。
相続はよく「争族」とも揶揄されます。
あんなに仲の良い家族だったのに、相続が発生したことで、不仲になってしまう。実際に、そういったことを何件も見てきました。「うちは大丈夫」と思っても、リスクがあるのであれば、事前に排除するのが、親の務めです。
そうならないためには、相続をする後継者側ではなく、被相続する現経営者側が事前に準備しておく必要があります。そのためには、民法の知識を税理士や弁護士等から教えてもらうことが有益です。
「遺留分」・「民法特例」・「納税猶予」といったキーワードをご参考に、顧問税理士先生等に聞いてみてください。
事業承継のために必要な資金を確保する。
中には「うちは自社株評価が0円だから問題ない」と考えている経営者もいらっしゃいます。確かに金銭的な問題なく事業承継できる場合もありますが、それは今の時点の話で、今後はわかりません。
また、自社株評価はなくとも、経営者個人が会社へ貸し付けた所謂「役 員貸付金」等があれば、それは個人のプラスの財産として評価され、相続税の対象になるかもしれません。ともかく、資金確保する手法は知識として持っておく必要があります。
どういった手法があるかと言いますと、
- 政府系金融機関からの融資。後継者個人への融資、会社への融資、両方ともできます。
- 信用保証制度の活用。通常の保証枠とは別枠が用意されています。
があります。覚えておいて損はありません。※直接融資にせよ、保証承諾にせよ、当然、返済原資を示すことが必要となります。
以上が、勉強会で学び、再確認した一部です。事業承継は、かなりの時間を要する必要がある場合が多いです。用意周到にしておかなければ、業績好調であった企業も一瞬で不調に陥ります。そうならないためにも「経営計画」とともに「事業承継計画」を立て、双方の計画がリンクするように意識してみてください。
また、「相続」というと、後継者側も遠慮が合って、話を言い出しにくかったりすることと思います。(生きている間に、死ぬ話をするのは、当然、抵抗があります)
本来は、現経営者側が積極的に話をしていければ良いのですが、事業運営に時間が掛かり、なかなかそこまで考えている時間がないのも事実です。ただ、個人には「寿命」があります。そこは割り切って、顧問税理士を交え、積極的に協議をしていくことを、強くお勧めいたします。(そのための顧問です)
企業は「寿命」はありません。「永続」を目指してください。「事業承継計画」を立てるのに、早すぎるということは決してありません。意識して準備なさってください。
執筆:坂将典