制度融資の審査は厳しくない
制度融資とは、都道府県や市区町村などの自治体が用意する融資制度です。しかし制度融資は、知っている人は知っている、知らない人は知らない存在です。
制度融資は、一般の信用保証協会保証付融資に比べて審査がゆるいというメリット、制度融資によっては固定で低金利の融資が受けられる、というメリットがあります。
金融機関は、制度融資を勧めてくることはなかなかありません。その理由は後述しますが、企業としては面倒くさがらずに制度融資について詳しく知ることによって、そのメリットを享受することができます。
制度融資には、次の2つのパターンがあります。
- 信用保証協会の保証を付ける制度融資
- 信用保証協会の保証を付けない制度融資
なお、資金の出し手は金融機関であり、自治体ではないことに注意してください。
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信用保証協会の保証を付ける融資
申込みは、金融機関、信用保証協会、自治体に対して行います。制度融資の場合、制度融資ではない一般の信用保証協会保証付融資に比べて、審査はゆるくなります。
その根拠は次のとおりです。
通常、信用保証協会保証付融資は、もしその融資が貸倒れとなった場合、信用保証協会が8割、金融機関が2割を負担します。(信用保証協会が10割負担の制度融資もあります。)
また、信用保証協会は日本政策金融公庫に、信用保険、つまり信用保証協会が貸倒れとなった場合の損失をカバーするよう、保険を掛けています。(日本政策金融公庫にはそのような役割もあるのです。)
貸倒れとなれば、日本政策金融公庫が信用保険引受先として、信用保証協会負担分の7~9割をカバーします。例えば日本政策金融公庫が8割をカバーする場合、残り2割は保険対象外であり、信用保証協会が負担します。
では、制度融資ではない一般の信用保証協会保証付融資が1,000万円、貸倒れとなったとしましょう。それぞれの負担分は、
金融機関 1,000万円×20%=200万円
日本政策金融公庫(保険)1,000万円×80%×80%=640万円
信用保証協会 1,000万円×80%×20%=160万円
となります。また、制度融資ではない一般の信用保証協会保証付融資の場合、融資審査は、金融機関の審査、信用保証協会の審査が行われます。(日本政策金融公庫は保険引受先としての役割であり、ここでは融資審査は行いません。)
次に制度融資の場合。貸倒れとなった場合、信用保証協会の負担分からいくらかを自治体が負担することになります。(大半の自治体は信用保証協会負担分のうち5割以上を負担します。)
例えば自治体が、信用保証協会の負担分のうち10割全てを負担するとします。制度融資(信用保証協会保証付)が1,000万円、貸倒れとなった場合、それぞれの負担分は、
金融機関 1,000万円×20%=200万円
日本政策金融公庫(保険)1,000万円×80%×80%=640万円
自治体 1,000万円×80%×20%=160万円
となります。また、制度融資(信用保証協会保証付)の場合、融資審査の場合、融資審査は金融機関の審査、信用保証協会の審査が行われます。なお自治体は審査は行いません。金融機関と信用保証協会が審査を行うという面では、一般の信用保証協会保証付融資も、制度融資(信用保証協会保証付)も同じです。
ただ、大きな違いがあります。一般の信用保証協会保証付融資と、制度融資(信用保証協会保証付)の、貸倒れとなった場合の負担分です。
一般の信用保証協会保証付融資の場合、貸倒れとなったら信用保証協会が16%(80%×20%)負担しますが、制度融資(信用保証協会保証付)の場合、貸倒れとなったら信用保証協会の負担は、前者に比べて少なくなります。
そう考えると制度融資の方が、信用保証協会においては審査がゆるくなる、ということです。
信用保証協会の保証を付けない制度融資
こちらは、金融機関と自治体が提携して、金融機関が融資を出すものです。申込みは、金融機関、自治体の窓口となります。融資審査は、金融機関が行います。もし貸倒れとなった場合、金融機関が負担します。
そのため、通常のプロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)と実質的に審査は変わらなくなります。
制度融資のメリット
制度融資のメリットは、信用保証協会保証付の場合であれば、一般の信用保証協会保証付融資に比べて審査がゆるくなることとともに、一部の制度融資では、固定金利、低い金利で融資が受けられる、ということがあります。
制度融資では、いろいろな制度がありますが、金利について、あらかじめ「1.5%」というように決められているものと、決められていないものとがあります。金利があらかじめ決められていない場合、企業と金融機関との交渉により、金利を決めます。
金利は、貸倒れにより負担する割合が少ないほど、低いのが通常です。なぜなら金融機関は、貸倒れで負担する割合が多いほど、それを補てんすることに備えて多くの利息収入を得ておく必要があるからです。
しかし信用保証協会保証付融資であれば、金融機関の貸倒れ負担が少ないため、金利は低くしてもよいはずです。そこを理解していない企業の場合、金融機関から言われたままの金利を受け入れてしまいかねないので、ご注意ください。
制度融資の場合、多くの自治体では、金融機関が融資を行う原資として、無利息で金融機関に資金を供給します(これを預託金と言います)。そのため、金融機関は低い金利で融資を行うことができるはずです。なお制度融資によっては、信用保証協会への保証料を自治体が負担してくれるものもあります。
制度融資の探し方・申込み方法
まずは「東京都 制度融資」というように検索してみてください。
また、金融機関や信用保証協会、自治体にも制度融資のパンフレットが置いてあります。なお制度融資では、それぞれ、融資を受けられる企業の要件が決められております。例えば東京都の、経営支援融資の、区市町村認定書不要型であれば、次のようにです。
次のいずれかに該当する中小企業者及び組合
- 最近3か月の売上が前年同期比で5%以上減少又は減少見込
- 最近3か月の売上が平成20年8月以前の直近同期比で5%以上減少又は減少見込
- 製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない
- 金融機関からの総借入金が前年同期比10%以上減少
- 倒産等企業に事実上の債権を有している
- 災害により事業活動に影響を受けている
- 東京都知事が指定するもの(アスベスト対策、電力料金値上げ対応)」
それぞれの制度融資の要件を見て、自社に当てはまるものがあれば、この制度融資を使いたいと指定して、金融機関に申し込んでみるとよいでしょう。金融機関は、一般の信用保証協会の保証付融資の場合は金利が自由に決められるので、高めの金利を言おうとする傾向にあります。
しかし制度融資で、あらかじめ金利が決められているものであれば、金融機関は金利を自由に決めることができません。また制度融資は、その数が豊富で、要件もいろいろあり、金融機関の職員としてもなかなか覚え切らないものです。制度融資と聞くと「面倒くさい」と感じる職員は多いです。
金融機関の職員は、社内研修で、制度融資を習うことはありません。私も銀行員時代、これについて習ったことはありませんでした。そのため金融機関は、制度融資はあまり勧めたくないものです。
企業側が「この制度融資を使えないか」と言わなければ、金融機関自ら制度融資を勧めてくれることはなかなかないでしょう。もし金融機関が制度融資にあまり乗り気でないのなら、自ら信用保証協会、もしくは自治体に出向くのもよいでしょう。
制度融資は、企業側から積極的に使おうとしなければ、始まらないものであります。
制度融資を受けるにあたっての注意点
なお税金の滞納があれば、制度融資は受けられません。制度融資には税金が使われている以上、当然です。なお、税金の滞納解消の見通しがあるのであればこの限りではありません。
優良な企業はプロパー融資
なお、金融機関が融資をしたくなるような優良な企業であれば、そもそも制度融資を使わず、プロパー融資を受ければ良いだけのことです。プロパー融資がなかなか受けられず信用保証協会の保証を付けることが前提になる企業であれば、制度融資を使ってみてください。
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