個人としてどこまで借入ができるか
資金繰りが厳しい会社は、社長が個人として借入して、それを会社に貸し付けて会社の資金繰りにまわしている、そのような会社も多いのではないでしょうか。そこで気になるのが「総量規制」です。この言葉、聞かれたことがある方も多いのではないでしょうか。
総量規制とは、個人の借入総額が原則として年収等の3分の1までに制限される仕組みのことで貸金業法に定められています。ただしこの総量規制、除外、例外も多く、詳しい知識を持っておくとよいでしょう。
総量規制は、個人の借入総額の規制ですので、当然、法人としての借入は対象外です。また個人事業主を営んでいる方が、事業資金として借入する場合も対象外です。なお、除外と例外、同じ言葉のようですが、総量規制においては次の使い分けをします。
除外・・・総量規制の対象とならない借入。総量規制の借入残高には含まれない。
例外・・・総量規制の借入残高としては参入する者の、例外的に年収の3分の1を超えた場合でも、その部分についての返済能力があるかを判断された上で借入できるもの。
まず、除外となる借入は、次のようなものがあります。
- 不動産購入や不動産改良のための借入
- 自動車購入時、自動車を担保とした借入
- 高額療養費のための借入
- 不動産を担保とした借入
- 売却予定不動産の売却代金により返済できる借入
など次に、例外となる借入は、次のようなものがあります。
- 借入人にとって一方的に有利となる借換え
- 緊急の医療費の借入
- 社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための借入
- 配偶者と合わせた年収の3分の1以下の借入
などまた、極度方式、つまりカードローン等を作る場合の計算方法は次のとおりです。
金融機関A社でカードローンを作って借入枠をとりたい場合、A社としては、自社分は極度額、他社分は残高で計算します。
例えば年収450万円の人が、金融機関A社にカードローン100万円の枠を作ろうと申込んだとします。その人は、他に金融機関B社でカードローンの枠が200万円あり、現在の残高は100万円あったとします。
そうすると、A社としては、年収450万円の3分の1、150万円をその人に貸付できる限度と考え、他社のカードローン残高100万円を差し引いた、50万円までのカードローンの枠を設定できることになります。
次に、総量規制における細かい実務を述べます。
- 貸付の申込みを受けた金融機関は、自社からの貸付残高が50万円を超える貸付、他社分も含めた総借入残高が100万円を超える貸付の場合、収入を明らかにする書面の徴求が必要。
- 1ヵ月の貸付の合計額が5万円を超え、かつ貸付残高が10万円を超える場合は毎月審査が必要。それにあたらなくても、貸付残高が10万円を超える場合は3ヶ月ごとに審査が必要。
- 途中の審査において、他社分も含めた総借入残高が年収の3分の1を超えた場合は、カードローン等の極度額の減額や、新規貸付停止を行う必要あり。
- 他社分も含めた総借入残高が100万円を超えた場合、収入を明らかにする書面の徴求が必要。
なお、借入の申込みを受けた金融機関は、個人信用情報機関が保有する個人信用情報を使用して、他の金融機関からの借入残高を調査します。
総量規制は、2010年6月より実施されました。それまでは、年収による借入の制限はなかったのですから、個人信用情報がきれいであれば、多くの借入を個人でできたものでした。
私自身も、9年前に、勤めていた銀行から独立開業する直前に、独立開業に備えて、銀行員時代の信用を活かしてカードローンを多く作ったものです。
経営者のみなさまは、個人信用情報がきれいで、会社の業績もまずまずであれば、将来に備えて、カードローンの枠を作っておく、ということが考えられます。
もし将来、業況が厳しくなり、銀行から借入ができず、現金預金もカツカツとなってしまえば、銀行融資の返済減額・猶予、つまりリスケジュールは当然行うとして、緊急の資金繰りにおいて活きてくるのが、過去に作っておいたカードローンです。
カードローンは金利が高めなので、使わないにこしたことはないですが、万が一の会社の危機の時に、活きてくるのです。そのような将来の備えも考えながら、今回述べた総量規制を熟知して、会社の将来の資金繰りを考えていってください。
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