中小企業の社長は社員の声をよく聞くべき?
中小企業といっても、年商が億単位になれば社長一人でスミからスミまで会社を見通すことはできません。しかし、仕事は全社員で行うもの。
社長にとっては、社員全員が自分の代理人としての役割を持っているためその動向が全く気にならないというのも(何もかも委任してよいような方はともかく)あり得ない話です。
企業経営が曲がり角なときにはなおさら、マンパワーで立ち向かいたいわけですから社長としては、
「私の味方をしてくれるのだろうか」
「皆にどう思われているだろうか」
「あの社員は何が不満なのだろう?」
「彼はどうして言うことを聞いてくれない?」
といった、社員の気持ちと自分の想いとのギャップが気になるのも、止むを得ないことです。
そのポイントの掘り起こしとして、社員向けにアンケートを行い結果を経営にも反映させることで社員の不満を解消し、経営も改善させるという手法があります。大手企業では昔からありましたが、最近では中小企業で行われることも多くなりました。
この社員向けアンケート、という手法は一つの手法として効果があり、有力であり、行った場合には重視するべきものです。しかし、アンケート結果の読み取り方には、細心の注意が必要です。
この読み取り方について、簡単にまとめてみました。
1.多数決が正しいとは限らない
どんな場面や状況でも、自らを正当化しようとして「みんながそう言っている」から、と主張する方、いらっしゃいますよね?
多数意見は間違い、とまでは申しませんが、「多数派=正しい」とは言えません。特に会社の空気があまり良くない企業状態の場合にははけ口として少数派がやり玉に挙がりやすいものです。さらには、社長自身がやり玉に挙がる例が多々あります。
みにくい言い草ですが、「今のままではマズい」⇒「今の常識・主張・文化・風土を疑うべき」なのです。全社員、今思っていること自体が正しいか?から検討が必要なのです。
よって、今皆がどう思ってしまっているかを確認する、という意味で重要なのであって、それが正しいか?は別の問題になります。
2.字面通りに答えても、解決しない問題
「○○のような制度を導入して欲しい」というご意見も、アンケートにおいてはよく挙がります。もちろん、記入された方が、ご自身、もしくは周囲を見回して必要と感じたものでしょうから、無視してしまってはアンケートの意味がなくなってしまいます。
しかし、中小企業の場合には「人・時間・お金」をかける制度を新たに導入するのは正直難しい。
この問題への対応は、その制度を導入する/しないではなく、結果として同様の効果がでるようにすること、に尽きます。特に「教育・育成」に関わる制度については、社内で研修をするよりも実地での経験の方が余程効果があるため、ベテランの方とそうでない方の配置によって解決するべきものです。
そうでなければ、「分からないことが聞けない、聞きにくい」環境や風土になっていることそれ自体を問題にするべきです。
3.本当に問われているのは、経営の姿勢の明示と実行、人気取りではない
社員の声は真摯に受け止めるべきではありますが、そのまま実行すればよいものではない、ということに尽きます。
正直申し上げて、そんなことをした場合は、「社長がナメられるだけ・・」なのです。要求すれば通るだけのものなら、エスカレートするだけですから。
社員の声を聞かなくてよい、ということではなく「どうしてそんな風に思われてしまったのか?」を理解すること。それは、社長の想いや考えが伝わっていないことであったり会社の制度や状況が、社長の想いや考えと合っていないことから発生する歪みであったりそもそも、想いや考えに賛同を得られていないことが背景にあります。
不満や意見が出てくる「背景」が肝心であり、その背景の原因が解決するべきもの。アンケートは、その表層部分の確認として、大事にするものとご理解下さい。
執筆:今野洋之